愛媛大学法文学部 創立50周年記念誌
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35Ehime University Faculty of Law and Letters 50th こうした流れを背景に、愛媛大学法文学部も法科大学院設置へ向けて、松山大学法学部との連携を模索するも、2004(平成16)年4月の設置へ向けた手続き上の問題から断念し19)、結局、香川大学法学部と合同で香川大学大学院香川大学・愛媛大学連合法務研究科(四国ロースクール)を開設することとなった。 全国で唯⼀の連合式だった四国ロースクールは、香川大学に拠点が置かれ、愛媛大学の教員は香川へ通い、夏に愛媛大学で集中授業を実施するという形態であった。四国ロースクールは地方における司法格差を解消すべく、30名という全国で最も定員が少ない精鋭教育を謳いスタートしたものの、「〔2008年より〕2年連続の定員割れや、司法試験合格者数・合格率の伸び悩みなど実績面の低迷に加え、〔当初の合意とは異なる〕運営への不満から愛媛大教員に「撤退論」がくすぶる」20)などの問題を抱えていた。 全国的にも合格率と定員充足の問題を抱える法科大学院は多く、2010(平成22)年には中教審より四国ロースクールを含む14校に対して改善や補助金削減が検討されるに至った。このうち2011(平成23)年度からの募集停止を発表し、ロースクール撤退を決定する大学が現れ始めたが、四国ロースクールは存続のために改革への動きを継続した。「四国で働く弁護士を育てるため、資格取得後の実務研修(原則2年間)施設として愛媛、香川両大に「弁護士研修センター」(仮称)を設置し、同校OB弁護士の下で実務経験を積む場を提供する」ことや、「地元企業や自治体への就職促」などの動きもあった。また地元で勉強し、弁護士になるという地方の法科大学院の意義は確かに存在していた21)。 しかしながら、四国ロースクール合格者の都市部他校への流出に歯止めはかからず、さらに「司法試験合格率低迷や弁護士の就職難のほか、法科大学院を修了しなくても司法試験を受けられる予備試験制度導入による法科大学院志願者減少や、国が各校の実績に基づいて運営費交付金を全額カットや傾斜配分する制度を導入した」22)ことによる運営状況の悪化から、2014年5月に香川大学は四国ロースクールの廃止を正式に発表し、2017(平成29)年3月31日に、開始から十年余りでその幕を閉じることになった。

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