愛媛大学法文学部 創立50周年記念誌
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96第2部 法文学部の思い出 在校生の声私の海外経験と法文学部法文学部総合政策学科 4回生 牧野 大地 故郷には未だ残雪残る3月、飛行機から松山に降り立つと春風とともに桜の花も咲こうかとしていた穏やかな光景は、未だに私の脳裏に深く刻まれている。正直なところ、センター試験を終えてより「現実的な選択」を迫られるまでは、その答えとして「愛媛大学」という考えは欠片もなかった。特に私が大学選びにおいて最も重要視していたことは、国公立でありなおかつ「個性的な海外経験ができる」ことだった。私にとって、グローバル・スタディーズコース(GSC)はその点において魅力的だったのである。 この3年強で、2回海外へ行く機会がいただけた。数は多いとは言えないが、いずれもとても貴重で有意義な時間を過ごせたと感じている。 2017(平成29)年の3月に、ルーマニアに10日ほど滞在した。愛媛大学と交流協定を結んでいる大学での日本語指導研修というものであったが、受入先の先生のご意向もあって、多くの時間を現地の学生と交流することにあてられた。同年代で、日本から遠く離れた地で日本語を学ぶ人の多さとその熱心さに驚いた。同時に、東欧独特の街並みや文化、食に触れられてとても充実した日々を過ごした。 同年の9月には、アメリカに一週間滞在した。GSCでの海外フィールドワークである。メリーランド大学で教鞭をとられている先生の授業時間をいただき、企業の社会的責任(CSR)についてのプレゼンを行い、学生とディスカッションするというものだった。加えて、プレゼンにおいて題材にした企業の店舗を見学することも行った。 以上のような経験の中で、「日本に関する知識の浅さ」と「実際に見聞きすることの重要さ」を学んだ。前者は、特にルーマニアで感じたことである。日本で普段生活している分にはただの一日本人かもしれない。しかし、一歩海外に足を踏み入れると、よほどそこが日本人だらけでもない限り、誰もが“日本代表”になりうることを痛感した。特にルーマニアでは、相手が日本語学科の学生でより日本に関心を持っていることも相まって、様々な質問をされる事があった。普段生活する上で気にかけたことがないことも、いざなんの前触れもなく質問されたり、説明させられたりすると、意外と答えられないものである。例えば、「山と丘の違いはなんですか?」とか、「なにか信仰している宗教はあるのですか?」とか、「ホンネとタテマエってどうやって使い分けているのですか?」とか……。すべてに答えられるほどの知識はないにしても、あまりに答えに窮するさまを見せることがないようにしなければならないと感じた。 更に痛感したのが後者である。ルーマニアでは、日本語学科が設置されているにもかかわらず専任の日本人教員が居ない現状や、未だチャウシェスク政権の面影が残っていることは、私の予想を遥かに上回っていた。アメリカでは、未だなくならない人種差別や、随所に垣間見える良くも悪くも「アメリカっぽい」文化―アメリカのスターバックスで日本のような手厚い接客を期待してはいけない―などは、やはり実際にその場で経験しないとわからない部分もまだまだ多く残されていることを見せつけられた。 法文学部が50周年を迎える前後で、取り巻く環境は大きく変わった。私はちょうど総合政策学科最後の代である。グローバル化と再び芽吹きつつある保護主義的な情勢の中で、今後より多くの法文学生が海外経験を積み、社会生活で活かせるような潮流が今後も続くことを願ってやまない。ルーマニアにて

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