伊藤 浩教授

いとう ひろし / ITOH Hiroshi

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専門分野:民法
教員からのメッセージ
 ゼミでは,民法に関する判例研究をしています。判例というのは過去の事件についての裁判所の判断です。そのようなことをなぜ研究するのか。疑問に思う人もいると思います。そのような細かなことをするから,法律学は好きになれない,と思う人もいるかもしれません。
 しかし,裁判では,一方が善人で他方が悪人というような単純なケースはないといっても過言ではないでしょう。皆さんはコンビニで買い物をして,代金の支払をなんとか逃れようとしますか。このような場合には,皆さんは買主であって,代金を支払わなければならない義務があり,その支払いをするわけです。裁判にはなりません。裁判では,一方には一方の主張があります。他方には他方の主張があります。それぞれが自分の立場を「正しい」と思い争うわけです。裁判官はそれぞれの主張を聞いた上で,法律に基づいて判断します。それが判例となっていくわけです。
 さて,単純に考えると,裁判ではどちらかが勝つわけですから,裁判官はどちらかの主張が法律に従っていると判断するわけです。法律の規定があっても,それぞれの人が「正しい」と考えるところが違うのはなぜでしょうか。法律には解釈が必然的にともないます。紛争が生じるのは,解釈のちがいによるということもできそうです。
 では,裁判官の解釈は適切なのでしょうか。裁判官はなぜそのような解釈をしたのだろうか。こうした問題が生じることになります。ここから判例研究が始まります。ある利益とある利益との対立ということもあります。このような場合には一方の利益を優先するのはなぜか,という問題にぶつかることになります。また,ある政策とある政策との対立ということもあります。この場合には,一方の政策を優先するのはなぜかという問題に取り組まなければなりません。
 判例研究は,個々の事例の細かいことを無視することはできませんが,それにとどまるわけではありません。社会を,世の中を考えていくことになります。そしてそれが法律学の出発点と言ってもいいように思います。