藤村 瞳講師

ふじむら ひとみ / FUJIMURA Hitomi

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専門分野:地域研究
教員からのメッセージ
 皆さんにとって、外国語や異文化を学ぶ意義は何でしょう。グローバルに活躍できるスキルを身に着けるといった実利ももちろんありますが、最大の魅力は常識や既知の考えを絶対視せず、多角的に物事を考えなおす機会に恵まれる点にあると私は思います。私は東南アジア、特にミャンマーという国を専門に研究していますが、ミャンマーの最大都市ヤンゴンに2年間留学したときには、気候も国の成り立ちも違う環境で日本の価値観で物事を捉えることがいかに無意味であるかを痛感しました。現地の人たちの考えや行動原理の方が合理的に思えることも多く、そうした経験の積み重ねは、自分自身の「当たり前」を見つめ直し、一つの事象について様々な視点から考えてみる良い訓練となりました。
 東南アジア地域研究のゼミでは、生態、文化、言語、そして民族的に多様な東南アジアという地域について学びながら、既存の知識や理解のあり方を相対化できる思考力を養うことを目標とします。その際に重要となるのは、「他者から学ぶ」という姿勢です。東南アジアはいわゆる途上国が多い地域ですが、このことは、日本の私たちが「上から目線」でこれらの国々を観察し、現地の人びとに接してよいということを意味しません。地域研究という学問分野では、現地社会あるいは地域住民が直面する問題や現象について、彼らの視点に立脚して内在的に理解しようとする姿勢が求められます。異なる他者の視点に立つためには、対象地域の基礎知識はもちろん、言語の習得や、現地での調査、あるいは東南アジア出身の人びととの交流など、一歩踏み込んで理解を深めることが重要です。歴史的・経済的つながりも深いアジアの隣人として、東南アジアへの関心を高めながら、多文化・多様性のなかで生きるための柔軟な思考力を鍛えていきましょう。
 ミャンマーの諺の一つに、「智慧というのは金の壺、財というのは目くらまし」というものがあります。金で手に入る物品は手品のように瞬く間に消えてしまう一方、智慧とは金の壺(得難い宝の意)のように貴重であり消えてなくなるものではないという意味で、智慧を追求する重要性を説いています。智慧とは単なる情報や知識のことではなく、物事の真理を見定める力のことです。皆さんが、大学生活の4年間、そして東南アジア地域研究での学びをつうじて一つでも多くの智慧を身に着けられるように、ゼミや講義をとおしてサポートしていきます。