児玉 麻美講師

こだま あさみ / KODAMA Asami

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専門分野:ドイツ言語文化
教員からのメッセージ
 高校生だった頃,何となく手にとって読みはじめたゲーテの『ファウスト』第二部の結末に衝撃を受けました。主人公のファウスト博士は,悪魔と契約を交わし,純粋な市民の娘グレートヒェンを誘惑して破滅へ向かわせ,自らの野望を達成するために多くの犠牲をもたらしたにもかかわらず,最終的に<永遠の女性的なるもの>によって救済されます。「この結末で本当にOKなのか?」――『ファウスト』のハッピー・エンディングは自分にとってずっと謎でした。
 大学院へ進学して一年目の夏休み,書庫のなかで偶然手にしたゴットホルト・エフライム・レッシングの全集に,同じテーマを扱った断片『ファウスト博士』を発見し,救済という結末の是非について再び考えるようになったのが,現在のテーマに取り組みはじめたきっかけです。18世紀ドイツの劇作家レッシングは,「ファウストが悪魔と契約を交わしたのは世界の真理を解き明かすため。人間の知識欲は罪ではない」と考えて,この主人公の救済を試みたのです。いったんは納得しましたが,すぐに疑問が浮かびます。――「真理を追究するためには何をしても良いのか?」
 文献文化学研究は,内からわきあがる素朴な疑問との絶えざる取り組みです。なぜこのようなテクストがうまれたのか? 時代精神,歴史的背景,同時代の人びとの反応,後代における受容など,あらゆる要素を検証しながら謎の解明に迫っていく過程はスリリングで,知ることと考えることの喜びをいつも再認識させてくれます。一方こうした研究は,元となるテクストを精読するための読解力,二次文献へとアクセスするための情報収集力,さらにそれらを客観的に考察するための分析力など,多くの能力を必要とする,地道で苦しい作業でもあります。必要な情報を整理し,筋道をたてて説明し,さまざまな意見を取り入れながら自分の考えをまとめあげていく力は,研究のみでなく日常生活のあらゆる局面で役立ち,人生をより豊かなものにしてくれるはずです。
 私の授業では,さまざまな文献や映像,雑誌記事,インターネット上の情報などを用いながら欧米言語文化への知識を深め,気になるテーマのことをじっくりと調べ,自分なりに考えを深めていく充実した時間をみなさんと共有できたらと思っています。