中筋 朋講師

なかすじ とも / NAKASUJI Tomo

,

専門分野:表現文化論
教員からのメッセージ
 みなさんは演劇を見にいかれたことはあるでしょうか。映画に行くことはあっても,お芝居を見にいくことはあまりないかもしれません。日本では,劇場という場所が,行き慣れていないと少し敷居が高く感じられるからでしょうか。あるいは,特殊効果も場面転換も自由自在な映画のほうが楽しいと思われてのことかもしれません。けれども,その場に生身の人間がいて,同じ空間を共有しているということのインパクトはとても大きなものです。生身のからだと対峙することができるのは,さまざまな芸術のなかで演劇やダンスといった舞台芸術の特権だと言えるでしょう。
 現代演劇では,この生のからだと向きあう体験自体が生みだすドラマを軸にした舞台づくりが数多くなされています。そこでは,ドラマを生みだすことのできるような独特の強度をもったからだとはどのようなものなのかが重要になっています。演技のためのトレーニングは劇団や指導する演出家によって千差万別ですが,そうは言っても,たいていの場合にからだづくりの基盤になるのが「脱力する」ということです。ただし,脱力する――リラックスするということは,ただ「だらっとする」ことではありません。からだがリラックスした状態とは,からだに余計な力が入っておらず,そのおかげでそれぞれの場面に応じて必要な動きがすぐにできる状態です。自分の内側の状態にも,外側からの刺激にもアンテナをはりめぐらせていて,それでいて神経質になっているのではなく,落ち着いた状態です。からだの感受性が高まっている状態と言うこともできるでしょうか。
 このようなからだの状態を知り,身につけておくことは,演劇をするためだけではなく,日常においてもとてもプラスになります。みなさんは大学に入ると,たくさんの人に出会う機会があると思います。それぞれに,さまざまな考えや興味をもった人たちです。リラックスして人と向き合うことで,自分とはちがう考えや興味をスムーズに共有することができます。さまざまな考えを知ること,ちがいを受けいれること,そこから変化すること――それは人生の手ざわりを生みだし,これからさまざまな局面で支えになってくれるものです。