か行

神楽岡 幼子教授

かぐらおか ようこ / KAGURAOKA Yoko

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専門分野:日本文学

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教員からのメッセージ
 400年以前に歌舞伎の歴史が始まります。記録映画もビデオも存在しない時代ですから,その時代の舞台を今日,目にすることはもちろん不可能です。けれども,記録映画やビデオがなくとも,実は江戸時代の歌舞伎を知る方法は豊富にあります。江戸時代の上演記録や脚本,ちらし・パンフレットなどの宣伝物,現在の劇評に通じる評判記,ブロマイドに相当する役者絵,あるいは現在,テレビや映画が小説化されるように,歌舞伎を素材にした小説もあるのです。それらの材料をかき集めれば,江戸時代の歌舞伎を体感することは夢ではないのです。そのための方法を身につけ,自分の力で江戸時代の劇場へのチケットを手にしてみませんか。そして江戸歌舞伎の世界を楽しんでみませんか。

梶原 克彦教授

かじわら かつひこ / KAJIWARA Katsuhiko

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専門分野:歴史政治学

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教員からのメッセージ
 私は19世末からのオーストリアにおけるナショナリズムの問題を研究しています。現在のオーストリア人にとって「自明である」オーストリア人という意識は,第二次世界大戦後に「形成された」ものだといわれています。私は,このオーストリア人意識がどのようにして形成されたのか,その過程を考察しています。
 舞台となる中央ヨーロッパは典型的な多民族地域で,民族同士の対立が生じ,そのため二度の大戦の舞台ともなりましたが,それだけに,現在でも傾聴に値するような諸民族共生の理論が提示された地域でもあります。さながら「実験場」のような地域の民族問題を,歴史を遡及して考え,これを現代や他の地域の問題と比較検討できるのです。このことは,日本人意識のように「当たり前」のように感じているものを相対化し,「なぜそのような意識を持っているのか」と問いなおす手掛かりにもなるでしょう。
 現在は,従来の研究をさらに進め,第二次世界大戦後の国民意識形成へ向けた動きを追求する一方で,現代に関する問題関心から「人の移動」を研究しています。具体的には,19世紀末から現在に至る移民・外国人労働者の問題,そして第一次世界大戦における捕虜政策と大戦後の帰還問題を検討しています。これらを通じて「国民国家の時代」と呼ばれる20世紀を再考できればと考えています。
 私の専門分野は,政治学の一分野である歴史政治学(政治史)です。歴史を取り扱う分野ではありますが,現代的な関心を持つ人にもおすすめです。「歴史は一度きり」だとすれば過去のことをあれこれ調べても意味はないのかもしれません。しかし人間社会の仕組みを知ろうとするとき,なかなか「実験」ができないことを思えば,過去の事象を通して現在の事柄を考察する必要性も生まれてこようかと思います。政治学のなかに歴史を取り扱う科目がある理由もここにあり,だからこそ,現代の問題に関心がある人にもぜひ学んでほしいと思っています。

加藤 祐子准教授

かとう ゆうこ / kato yuko

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専門分野:地方自治法・行政法

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教員からのメッセージ
法学という分野は、一般的に、難しそうな印象を受けるものであるかもしれません。その中でも、私の担当する行政法や地方自治法はどのようなものなのか(特に行政法)、イメージがわきにくいものだと思います。しかし例えば地方自治法は、自治体がその地域の特性に応じた自主性・自立性を発揮する仕組みをつくるうえで大切なルールを定めており、実は、私たちの暮らしと密接なかかわりを持っているものです。
私が専門に研究している地下水行政について言えば、地下水保全において大きな役割を担ってきたのが地方自治法や憲法等で学ぶ条例です。日本では、地下水は土地所有権に付随するものとして、土地を持っている人がその土地の下にある地下水を自由に採取できるという考え方が古くから根付いてきました。しかし、高度経済成長期に地下水汚染や地盤沈下が問題となり、地下水を個人が自由に採取できるものとするのではなく国や自治体のものとし、取水等の規制を厳しく行うべきではないかという声が高まりました。その中で、国の法律レベルでは地下水を保全するための仕組みがなかなか作られず様々な利害関係者の反対等もあった中で、地下水に生活用水等を大きく依存している自治体が先陣を切って条例を制定することによって独自に地下水の保全システムを構築し(地下水保全条例などの制定)、その地域の地下水保全に取り組み続けてきました。そのため、自治体によっては、条例上、個人が自由に地下水を採取すること等に対して厳しい制限を加えているところ等があります。
このように、具体的な題材を通して見てみると、地方自治法等で学ぶことの意義や機能について、イメージがだんだんとわいてくると思います。このような学習を通じて、皆さんには、自分たちの地域生活や社会をどのように形づくっていくべきか、主体的に考えられるようになってほしいと思います。

兼子 純教授

かねこ じゅん / KANEKO Jun

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専門分野:地理学

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教員からのメッセージ
 出身は愛知県豊田市で,これまで新潟県と茨城県つくば市に在住していました。それぞれ地域的な特徴や個性を持つ場所ですが,共通していたのは「自動車社会」であったということです。いわゆるモータリゼーションの進展によって,われわれ生活者は便利さを享受するとともに,活動の範囲を大幅に広げてきました。そのような生活者(消費者)に対して,チェーンストアと呼ばれる企業群は,消費者の身近な場所に店舗を展開し,大量仕入れやコストの削減によって低価格な商品を販売して,消費者の支持を集めて成長してきました。今まで大都市に行かなくては買うことができなかった衣料品や雑貨のブランドも,現在では全国各地に展開するショッピングセンターで手に入れることができます。そのような背景には,道路網整備による物流システムの発達や情報システムの高度化といった技術の進歩が欠かせません。
 以上では近年の買い物環境を巡る「善」の側面を強調してきましたが,「負」の側面はないのでしょうか。上記の店舗群は消費者の近くに店舗を立地しようとするあまり,「郊外型」「ロードサイド型」の商業集積地を新たに生み出してきました。衣料品チェーン,家電量販店,大型ショッピングセンター,食料品スーパーなどなど・・・。限られたパイ(人口数)の中で,新たな購買先が生まれれば,奪われる場所もあります。それが中心市街地の空洞化問題と呼ばれるものです。なぜ,中心市街地を活性化させなければならないのか?これは学問上での課題でもありますが,中心市街地はやはり「都市の顔」とも呼ぶことができる存在で,その都市の経済,社会,文化の基盤となるべき場所です。自分の出身地が没個性で他の都市と何ら違いがなければ,その土地に愛着を持てるでしょうか。私は愛媛という土地で,今後の都市がどのような存在であるべきなのか考えていきたいと思います。
 2008年の日経流通新聞(日経MJ)によれば,皆さんの世代の若者は「巣ごもり族」と呼ぶそうです。つまり,車離れ,酒離れが顕著で,インターネットや電子機器を活用して自宅での快適な生活を楽しみ,行動範囲を広くしない志向の世代だそうです。これは悪い側面ばかりを強調した話ではありません。若者の車離れは,環境問題への強い関心の現れであり,これからの都市社会は公共交通を活かしたコンパクトなまちづくりをしていかなくてはならないのですから。しかし,せっかく松山という土地で過ごすからには,一歩まちへ出かけて「見て」「聞いて」「話をして」見ませんか。地理学のアプローチは多様ですが,私はさまざまな土地で見て,聞いて,話をして,その地域の構造を把握することに努めています。さまざまな土地に出かけ,さまざまな人から話を聞き,たまにはお酒の力を借りながら語り合える,地理学はそんな魅力のある学問ですよ。ぜひ,一緒に地理学を学びましょう!

川島 佳弘講師

かわしまよしひろ / KAWASHIMA Yoshihiro

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専門分野:日本史

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教員からのメッセージ
 皆さんは「戦国時代」と聞くと、どのような印象をもちますか。天下統一に向けた群雄割拠の時代、合戦が繰り広げられた争乱の時代など、個人の興味や関心、視点によって多様なイメージがあると思います。いずれにしても、社会全体の構造の変革が大きく進んだ時代であることに間違いありません。私は全国各地に活力のある時代だったと考えています。戦乱や飢饉など地域社会の存亡にかかる厳しい現実がありましたが、その一方で地域の領主や民衆たちは、あらゆる手段を使って生き残るための方策を思案しました。ある者は地域資源をもとに経済活動で富を蓄え、ある者は軍事力や調略を用いて領地を拡大させ、またある者は外交戦略を駆使して一族の存続を図ったのです。
 愛媛県の中世の城館跡の分布状況をみると、瀬戸内の島々から四国山地の山間部まで県内のほぼ全域に広がっているのがわかります。その数は、遺構が確認できるものだけで700以上、伝承地などを含めると優に1,000を超えると考えられます。大きな屋敷をもつ大規模な城から、合戦時の拠点となる砦まで、どれも地域の人びとが活動した痕跡です。ではなぜ、離島や今では人里離れた山奥にまで城館が築かれたのでしょうか。それを読み解くには、時代の特徴をとらえるのと同時に、その土地ならではの地域性を理解する必要があります。例えば、海に面した城の多くは、港や海峡を監視するために築かれました。そこから当時の海運の様子、人や物の動きがみえてきます。戦国時代の研究を通して、地域社会をみる目が養われます。この視点は、現在の地域だけでなく、未来を見据えるための手がかりとなるものです。
 私は愛媛大学に入学して、はじめて本格的な「学問」としての日本史に出会いました。大学の日本史は、高等学校までの「教科」の日本史とは異なり、受動的に知識を蓄えることよりも、埋もれた事実を掘り起こし、新たな歴史像を創り出すことに重点が置かれています。それを知った学生時代の私は、自分も通説を覆して歴史的事実の「第一発見者」になれるかもしれないと思い、胸を躍らせたことを今も覚えています。学生の皆さんにも、新たな発見をする感動を味わって欲しいと願っています。

木下 英文教授

きのした ひでふみ / KINOSHITA Hidefumi

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専門分野:応用英語学

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教員からのメッセージ
 「英語コミュニケーション論」という名称からみなさんはどのような研究分野を想像するでしょうか。「コミュニケーション」という言葉自体,様々な分野で用いられていますので,甚だ漠然としたイメージしか持てないかも知れません。簡単に説明しておきましょう。
 私たちは言葉を交わす際,その伝達過程を意識することは日常生活上ほとんどありません。みなさんは,相手が自分の言葉をどのようにして理解するのかを疑問に思ったことはありませんか。英語コミュニケーション論の仕事の一つは,英語が伝達行為の中で見せる様々な「仕草」に規則立った説明を与えることです。たとえば,"Do you know where the steak is?"というYes/Noを求める疑問文に対して,一見すると意味的に全く関連性の無いように思われる"Your dog looked happy"という返事が自然に感じられるのはなぜでしょう。また,"Could you open the door?"よりも"I wonder if you could open the door"の方が丁寧なのはどうしてなのか。他にも,場面の性格や話題・目的などによって英語の表現形態は影響されます。このような伝達行為のストラテジーに光を当ててみると意外な発見があるものです。一方,英語の姿から伝達行為の背景にある社会的要因に目を向けることも可能です。英語にも男言葉や女言葉がありますし,社会階層や民族などの要素が言語の中に反映される例も数多くあります。このように生きた言語としての英語は実に様々な表情を見せてくれます。そこにはまさに現実社会が反映されているのです。私の授業では,以上のような点についてみなさんと一緒に考えてみようと思っています。

幸泉 満夫准教授

こいずみ みつお / KOIZUMI Mitsuo

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専門分野:考古学

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教員からのメッセージ
 本学の文系では,法文学部でのみ取得可能な国家資格「学芸員資格」の養成コースを担当しています。
「学芸員」とは,国の法律で定められた博物館等で働く専門職員のことです。
 ゼミでは,各種博物館の収蔵庫に未評価のまま眠る,貴重な考古系資料(=出土文化財)を「博物館学」的視座から再評価することが,専攻生の皆さんの最初の課題となります。同じ考古学分野でも,私のゼミでは「博物館学」がベースですので,遺跡の「発掘実習」は原則行っておりません(=新制「考古学Ⅱ」)。
 具体的には博物館概論,博物館資料論,博物館教育論,考古学概論Ⅱ,考古学特講Ⅱ, そして博物館実習Ⅰ・Ⅱ等の関連諸授業を通じて,学生の皆さん達とともに学び,語り合うなかで,文化財資料の取り扱い方や各種計測法,フィールド調査の方法,展示,普及教育,研究成果といった公開方法など,様々な専門技術と知識,理論の修得を目指します。そして,学部生段階での国家資格「学芸員資格」免許の取得を目標とします。
 在学中,幾多の実践経験を積み重ねることにより,きっと専門性の高い職種へと就職の門戸も開かれていくことでしよう。将来的には各種学芸員や文化財専門職員,教職員等として,各地の博物館園や教育委員会,埋蔵文化財センターなど,様々な専門研究機関や教育機関等への道が期待できます。また,例え将来は文化財関連の道に進まないとしても,きちんとした目標を定め,大学で学ぼうとする意欲さえあれば,大いに歓迎します。
 私のもう一つの専門は先史考古学です。従って,実践研究では縄文時代の「出土文化財」を基盤としています。人と社会,自然との調和を重んじた縄文時代人の精神文化構造を調べることで,現代社会の様々な矛盾についても,じっくりと考えてみませんか。博物館学をベースにした考古学Ⅱに興味関心がある学生さんは,ぜひ一度,法文学部本館4階にある研究室を訪ねてみてくださいね。

権 奇法教授

こん ぎぼぶ / KWON Gibob

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専門分野:行政法

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教員からのメッセージ
 大学における外国人教員というと,主に,語学を教えたり国際交流に関わったりすることをイメージする場合が多いでしょうが,私はそうしたことに直接関わっているわけではありません。普通に行政法を教えています。学問というのは,個々の具体的な事例を研究することもあるでしょうが,それよりも全体を貫く仕組みや理論を研究するものであり,このような理論は国境という壁を越えた普遍性を有するものでもあります。だからこそ外国人である私が日本の大学で行政法を教えることができたでしょう。もちろん,外国人としての自分の経験や知識を教育・研究に生かしていくことも重要だと思っています。
 さて,私が専門としている行政法とは,沢山ある法律のうち,行政に関する法律を総じていう場合のことです。行政法は,行政を縛るものであると同時に行政に権限を与えるものです。これは行政活動が法律に基づいて行わなければならないとのことを意味します。建築行政で言えば,違法建築物が存在する場合,行政はその建物の所有者に対して違法部分の除却命令を発することができ,また命令に応じない場合には強制的な手段を用いて除去することができます。このような行政の権限は,建築基準法という法律が行政にそのような権限を与えているからこそ可能なものあり,法律の根拠なしにはできない行政活動です。これを裏返してみると,建物所有者からすれば,違法でない建物の除却命令や強制執行を受ける所以はないことを意味します。このように,行政をめぐる法律関係は,行政の責務・権限と国民の権利・義務が対称構造にあり,行政法は,このような法律関係を規律する法律ということができます。
 行政法を勉強することは,様々な行政活動の仕組みに関する理解と,行政の活動をめぐって発生する様々な紛争を解決するための手続を学習することです。ひいては,行政法に関わる社会的問題を発見・認識し,問題解決のための手続や妥当な結論を導くためのプロセスを明確に理解できる力を身につけることでもあります。

近藤 有希子講師

こんどう ゆきこ / KONDO Yukiko

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専門分野:地域研究

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教員からのメッセージ
 アフリカ大陸では1990年代に深刻な紛争が多数発生しましたが、私はそのなかでも、とくにルワンダという小さな国の一農村に毎年通いながら、紛争後の社会のなかで対立関係におかれた人びとがいかにともに生きるのかということについて、一貫して考えてきました。
 私が専門とする人類学という分野は、「他者」や「異文化」への理解を通して、人間の多様性や普遍性を追究し、さらには私たちが普段当然だと思っている「当たり前」を相対化してゆく学問だといえます。その際、「他者」の生活の場に直接出向いて、長期間にわたって参与することで調査を進めていきます。一緒に農作業をして汗を流し、収穫を悦びながらともに食し、家族の誕生と成長を祝福し、ときに親しいものの死を悼む、という循環のなかに私自身も巻き込まれていくなかで、その地で生きていくための知恵や術を教えてもらうのです。そしてこの過程において、「他者」は見ず知らずのものではなく、次第に私の知人や友人になって、ほかでもない家族のような存在になっていきました。
 フィールドでは、自分自身ではどうにもならないことにも幾度となく遭遇します。それは大げさにいえば、自分の人生が台無しにされることであり、私という存在があくまで操作不可能なだれかに拠って成り立つものだということを、痛切に認識させられる出来事です。そしてそうした強烈な体験こそが、たとえばアフリカという遠い地に限らず、すぐ傍らにいる隣人の生きざまに向かい直す契機となり、「私たち」がともに生きていく仕方を考えることにつながっていくのだと、私は信じています。
 大学という場は、知識を身に着けて正答を得る、という高校までの学びのあり方とは決定的に異なるものです。そこでなにより大事なことは、問いそれ自体に至ることにあると思います。それは容易なことではありません。ぜひ各々の「フィールド」に出会って巻き込まれていくなかで、そこから発される問いに応じて、自分なりの切実な問いを見つけてください。そうした姿勢においては、ひとたびその問いに答えられたように感じても、私たちはまた新たな問いに導かれてしまいます。それは一生涯にわたって続く、ひどく困難で、しかし形容しがたい喜びを伴う営みとなるはずです。