地域研究

石坂 晋哉教授

いしざか しんや / ISHIZAKA Shinya

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専門分野:地域研究

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教員からのメッセージ
 アジア地域研究の魅力は,第1に,アジアの面白さ,奥深さ,多様さに触れることができる点にあります。みなさんはアジアと聞いて,どんなことをイメージしますか? アジアには,日本もその一部である東アジアの他に,東南アジア,中央アジア,南アジア,西アジア(中東)といった地域があります。各地域は,それぞれ固有の生態地理的条件のもとで,さまざまな歴史的経緯を経て,固有の特徴を備えています。日本とは異なる地域の社会や文化,政治や経済について学ぶことで,日本の“常識”を離れて,幅広い視野から物事を見たり考えたりすることができるようになるでしょう。
 例えば,アジア地域研究のゼミでは,インド独立運動の闘士M.K.ガーンディーの主著『真の独立への道』を読み,その非暴力主義や近代文明批判の今日的意味について,じっくりと考えます。ガーンディーの思想と行動は,19世紀末から20世紀初めにかけてのインドやヨーロッパなどの思想的・文化的状況や,当時の政治・経済の動きのなかで培われた独特のものです。しかしそこには,私たちが今,自分自身や世界について,これまでとは違った角度から捉え直したり,それらの理解を深めたりするために役立つ,さまざまな鍵が含まれています。
 ところで,現在,世界に生きている人の半分以上はアジアに住んでいる,という事実をご存知ですか? グローバル化の時代を生きていくみなさんにとって,今後,日本以外のアジアの人たちと接する機会も増えていくことになるでしょう。そうした時,アジアの社会や文化について大学で本格的に学んだ経験は,大いに生かされるに違いありません。これが,アジア地域研究の第2の魅力です。
 地域研究で重視されるのは,現地フィールドワークです。本や論文を読んだり,インターネットやTVを視聴したりして得る知識だけでなく,実際に現地に足を運び,現地の空気を身体全体で味わい,そこの人たちと直接話をして初めて得ることができる知識というものがあります。法文学部の「海外フィールド実践」はそれを体験する科目です。海外での“出会いと対話”は,きっと,みなさんの今後の人生にとって大きな意味をもつことになるでしょう。

近藤 有希子講師

こんどう ゆきこ / KONDO Yukiko

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専門分野:地域研究

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教員からのメッセージ
 アフリカ大陸では1990年代に深刻な紛争が多数発生しましたが、私はそのなかでも、とくにルワンダという小さな国の一農村に毎年通いながら、紛争後の社会のなかで対立関係におかれた人びとがいかにともに生きるのかということについて、一貫して考えてきました。
 私が専門とする人類学という分野は、「他者」や「異文化」への理解を通して、人間の多様性や普遍性を追究し、さらには私たちが普段当然だと思っている「当たり前」を相対化してゆく学問だといえます。その際、「他者」の生活の場に直接出向いて、長期間にわたって参与することで調査を進めていきます。一緒に農作業をして汗を流し、収穫を悦びながらともに食し、家族の誕生と成長を祝福し、ときに親しいものの死を悼む、という循環のなかに私自身も巻き込まれていくなかで、その地で生きていくための知恵や術を教えてもらうのです。そしてこの過程において、「他者」は見ず知らずのものではなく、次第に私の知人や友人になって、ほかでもない家族のような存在になっていきました。
 フィールドでは、自分自身ではどうにもならないことにも幾度となく遭遇します。それは大げさにいえば、自分の人生が台無しにされることであり、私という存在があくまで操作不可能なだれかに拠って成り立つものだということを、痛切に認識させられる出来事です。そしてそうした強烈な体験こそが、たとえばアフリカという遠い地に限らず、すぐ傍らにいる隣人の生きざまに向かい直す契機となり、「私たち」がともに生きていく仕方を考えることにつながっていくのだと、私は信じています。
 大学という場は、知識を身に着けて正答を得る、という高校までの学びのあり方とは決定的に異なるものです。そこでなにより大事なことは、問いそれ自体に至ることにあると思います。それは容易なことではありません。ぜひ各々の「フィールド」に出会って巻き込まれていくなかで、そこから発される問いに応じて、自分なりの切実な問いを見つけてください。そうした姿勢においては、ひとたびその問いに答えられたように感じても、私たちはまた新たな問いに導かれてしまいます。それは一生涯にわたって続く、ひどく困難で、しかし形容しがたい喜びを伴う営みとなるはずです。

藤村 瞳講師

ふじむら ひとみ / FUJIMURA Hitomi

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専門分野:地域研究

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教員からのメッセージ
 皆さんにとって、外国語や異文化を学ぶ意義は何でしょう。グローバルに活躍できるスキルを身に着けるといった実利ももちろんありますが、最大の魅力は常識や既知の考えを絶対視せず、多角的に物事を考えなおす機会に恵まれる点にあると私は思います。私は東南アジア、特にミャンマーという国を専門に研究していますが、ミャンマーの最大都市ヤンゴンに2年間留学したときには、気候も国の成り立ちも違う環境で日本の価値観で物事を捉えることがいかに無意味であるかを痛感しました。現地の人たちの考えや行動原理の方が合理的に思えることも多く、そうした経験の積み重ねは、自分自身の「当たり前」を見つめ直し、一つの事象について様々な視点から考えてみる良い訓練となりました。
 東南アジア地域研究のゼミでは、生態、文化、言語、そして民族的に多様な東南アジアという地域について学びながら、既存の知識や理解のあり方を相対化できる思考力を養うことを目標とします。その際に重要となるのは、「他者から学ぶ」という姿勢です。東南アジアはいわゆる途上国が多い地域ですが、このことは、日本の私たちが「上から目線」でこれらの国々を観察し、現地の人びとに接してよいということを意味しません。地域研究という学問分野では、現地社会あるいは地域住民が直面する問題や現象について、彼らの視点に立脚して内在的に理解しようとする姿勢が求められます。異なる他者の視点に立つためには、対象地域の基礎知識はもちろん、言語の習得や、現地での調査、あるいは東南アジア出身の人びととの交流など、一歩踏み込んで理解を深めることが重要です。歴史的・経済的つながりも深いアジアの隣人として、東南アジアへの関心を高めながら、多文化・多様性のなかで生きるための柔軟な思考力を鍛えていきましょう。
 ミャンマーの諺の一つに、「智慧というのは金の壺、財というのは目くらまし」というものがあります。金で手に入る物品は手品のように瞬く間に消えてしまう一方、智慧とは金の壺(得難い宝の意)のように貴重であり消えてなくなるものではないという意味で、智慧を追求する重要性を説いています。智慧とは単なる情報や知識のことではなく、物事の真理を見定める力のことです。皆さんが、大学生活の4年間、そして東南アジア地域研究での学びをつうじて一つでも多くの智慧を身に着けられるように、ゼミや講義をとおしてサポートしていきます。