愛媛大学法文学部 国際交流報告書2015
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4あたっては、郭先生の来日の機会に時間をとっていただき、教員間で話し合って決定した。 実際のプログラムはホスト側である開南大学の郭先生が組んでくださったわけであるが、その内容が秀逸であった(スケジュール表を参照)。 初日は、お互い初対面の学生たちであることを考慮し、体を動かしながらアイスブレーキングを行えるよう、タピオカミルクティーづくりが企画された。タピオカは近年日本でもおなじみの食材であるが、ほとんどの場合製品化されたものしか見る機会はない。しかし今回は、観光興餐飲旅館学科で学ぶ学生たちということで、前夜からタピオカを自分たちで手づくりして準備していてくれた。そのタピオカを使ってタピオカミルクティーづくりもまた、学生たちが指導してくれた。 このところ台湾では、タピオカミルクティーが大流行しており、専門のカフェも多くでき、旅行ガイドブックでも取り上げられる観光資源となっている。しかしそこには、若者の伝統的なお茶離れ現象と背中合わせという現実がある。手軽に、安く、飲み口のいい飲料として急激に普及しているタピオカミルクティーづくりを体験することで、それがどのように作られているのかを知るという意図が含まれていた。 その後、開南大学の学生による台湾のお茶事情紹介で知識や情報をさらに獲得した学生たちは、夕方から街に繰り出した。ここでもまた、「必ず飲み物の店に入ること」というお題が出された。街にはどんな飲み物の店があり、どんな人たちがどのように飲んでいるかを観察してくるようにという宿題である。茶葉の生産地および製茶工場へフィールドワーク 2日目はお茶の産地および製茶工場の視察のため現地調査に赴いた。借り上げた大型バスは学生たちで満席。愛媛大学側が教員含め22名、開南大学側もほぼ同人数で、1席も空きがない状態であった。じつは開南大学の学生はこの現地調査への参加希望者がもっといたのだが、バスの定員の都合上、制限せざるを得なかったのだという。せっかく興味があっても参加できないのは、申し訳なく、また残念でもあった。 訪れた龍潭区三水村は、東方美人茶(青茶の烏龍茶)の産地として有名である。また、村づくり活動も盛んで、国の補助を得て環境保全型の地域活性化に取り組んでいる。今回は三水村の林延能村長に村を案内していただき、また茶畑を訪れて茶生産農家の申文貴・章増両氏からお話をうかがった。前日の開南大学生による解説で東方美人茶について学んでいた学生たちは、その畑を見ながら栽培の苦労や工夫を聞くことで、お茶の価値に対する認識をいっそう深めた。特に虫が葉を噛むことで甘みのあるお茶ができるという話は衝撃だったようである。また畑によって異なる烏龍茶ができるというのも、見た目にも異なる畑の現場を見たからこそ実感をもって理解できたものと思われる。大人数での視察は先頭と後尾までが長くなり、通訳の声も届きにくくなるが、開南大学の学生たちが知る限りの日本語とジェスチャー、筆記などを駆使して情報伝達を助けてくれた。 村の女性グループが用意してくれた昼食は、貴重なお茶の実を搾って得られる茶油を使った素麺、地場野菜たっぷりのスープ、煮物、サラダなど健康的な郷土料理であった。いずれも美味しく、学生たちは何度もおかわりをしていた。 大溪老茶廠では、工場長の萬光久氏の解説を聞きながら工場を見学した。大溪老茶廠は伝統的な方法で製茶を行っており、古い機械や道具も現役で活躍している。萬氏は若いながらこの製法を守ることの重要性を感じ、転職して現在の仕事に就いたのだという。また工場の建物は台湾と日本、イギリスの様式がミックスしたユニークな建造物で、建築的にも魅力と価値を持ったものであった。また、茶の風味を損なわないよう工場の建物内にはトイレを作らないなどより良い製品づくりへの工夫や配慮に学生たちは感銘を受けていた。議論、プレゼン作成、そして発表 3日目はプレゼンテーション作成と発表会である。プレゼンテーションの統一テーマは「台湾の伝統的飲物であるお茶の未来を考える」とした。2日間の経験や見聞を振り返り、タピオカミルクティーづくりのようす茶畑を歩きながら栽培の苦労や工夫を聞く村の女性たちの手づくり昼ごはんはフィールドワークならでは
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