愛媛大学法文学部 青い地球交流記2020
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Study abroad brochure 2020Study abroad brochure 202010今年も『青い地球』をお届けする季節となりました。しかし、巻頭にも記したとおり、今年は「海外体験ブックレット」ではありません。コロナ禍において、海を渡ることはもちろん、大学での学びさえ不自由なことがたくさんあった中で、それでも何とか気持ちを強く持ち、さまざまな工夫を凝らしながら勉強を続ける現役の学部生・院生の皆さん、その学生さんたちを支えるべく日々試行錯誤を重ねてきた先生方、そして、かつて愛媛大学法文学部で学んだ世界各国の卒業生・修了生の皆さんから寄せられたことばを集めました。どのことばからも希望のかおりがします。今年の表紙の飛行機雲を見上げた時のように。空に飛行機雲を見つけると、きっといいことがある、そのしるしだとよく言われます。本誌もまたそんな「しるし」になれますようにという願いをこめて、お届けします。末筆ながら、各ページの執筆に多大なるご協力を賜りました諸先生方、学生の皆さん、世界各国の卒業生・修了生の皆さま方に心より御礼申し上げます。諦めたらまた未来は閉じる 多数に押し出されこぼれ落ちるため息 追いかけうつむけば 水たまりに架かる飛行機雲 ― “Contrail” 作詞・作曲:Nao'ymt 歌:安室奈美恵編集長 今泉 志奈子編集後記新型コロナウイルス感染者が確認されてからもう1年になる。この災禍が発生した当初、私たちはそれがわずか数週間で世界各地まで蔓延することなどとても予想できなかった。人類の歴史上、疫病災禍は珍しいことではないが、蔓延の速度については今回ほどのものははじめてであろう。それはなぜか。グローバル化の時代、人や物の国際的な流動が頻繁に行われるとともに、有害物の伝播も、そして、当然、災禍の拡大も速くなる。国際交流によって便利さや利益を得ることがあれば、危険や被害も同じく大きくなるということである。今回のコロナ禍の世界的な大流行は、グローバル化や国際交流の負の結果ともいえる。現在は、ウイルスの感染拡大を防止するために、人と人との国際交流は殆ど停止状態である。残念ながら、本学への留学を予定していた台湾人学生も来られなくなった。実は、今回のコロナ禍において、台湾の対応は「奇跡」と評価されている。発生した当初、台湾の専門家は直ちに現地調査に赴き、確実な情報を踏まえて、厳密な対策が実施され、果たして感染拡大は起きなかった。グローバル化の負の結果を免れるためには、国際交流の際、まず海外における危険や災害などを予防する警戒心が必要だということ、さらに、そのためには外国の事情や情報などを正確に、速やかに把握する必要もあるということだ。「奇跡」といわれる台湾と比較すると、多くの国々の被害は甚大である。その原因の一つは、やはり現地情報の把握が不充分であったこと、また対応策の措置も手遅れになったといわざるを得ない。グローバル化そのものが悪いというわけでは決してない。グローバル化の時代だからこそ、世界各国は共同の運命を背負っているのである。これからいずれコロナ禍が終息すれば、国際交流は必ず再開されるだろう。ただ、今回の経験を教訓として、国際交流は負の結果をもたらす可能性もあるということ、そして、それを防止するために、外国の言語・情報・知識をさらにしっかりと把握する必要があるといったことを忘れてはいけない。邢 東風(中国文学)昨年度末以降、台湾・開南大学等との学生交流(引率と受入)も、タイ・パンヤピワット経営大学のご助力を得て行うインターンシップ(引率)も中止となり、目下「国際交流欠乏症」に悩まされています(泣笑)。多くの皆さんも、海外に行けなくなり、悔しい思いをしているでしょう。でもこんな時だからこそ、あらゆるチャンスを捉えて国際交流に努めてください。本学にいる留学生との交流も、その一手段です。今年度、私は、ワークショップ型授業(遠隔型ワークショップです!)等につき、フランス人大学院生にTA(テーチング・アシスタント)として関わってもらいました。日本語で書かれたミニレポートに対し、英語でレスポンスしてもらったり、数少ない対面授業の機会に、ゆっくりとしたスピードの英語で話をしてもらったりしました。ルワンダや南スーダンの問題をとりあげた時には、アフリカ諸国との政治的経済的つながりが強く、PKOなどで軍事的にも関与しているフランス人の「ものの見方や考え方」は、アフリカを遠く感じがちな日本人にとり、たいへん興味深いものでした。また、全学レベルでは「留学生就職促進プログラム」というものがあります。これは、主として留学生を対象としたものですが、日本人学生も参加しています。日本での就職をめざしている留学生と交流することは、日本人学生にとって、海外へ行くための準備や、日本の社会を見つめ直すよい機会になりますし、自らの進路を考えるうえでも大いに役立ちます。海外体験の大きなメリットは、「さまざまな壁を越えて、前向きな人間関係を創る」という実体験をすることにあります。そして、そうした実体験を充実したものとするためには、普段の生活での意識や実践が大切です。留学生との交流についても、現在の状況では制約が大きいでしょうが、「今、できること」を、いろいろな人と相談しながら、しぶとく追求してください。楢林 建司(国際法)災禍だからこそ、海外を知ることがさらに必要「今、できること」をしぶとく追求しよう皆さんへのメッセージ国際交流委員の先生方より高校生に「海外体験については、事前の準備と事後のふりかえりを通して、日常の生活とつなげることが大事です」と語る台湾の台南市のお寺で予期せず出会ったメッセージ(右から左へ読む)です。今の時期、心に響きます台北の「道後温泉」義守大學日本語学部の学生義守大學台湾のマスク生産

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