愛媛大学法文学部 青い地球交流記2020
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2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(Covid-19)は瞬く間に世界中に広がり、この1年の間に世界の姿を変えてしまいました。海外研修プログラムや留学はすべて中止となり、大学の授業はほぼすべてがオンライン実施となりました。高校時代からずっと目標にしてきた海外研修がなくなってしまった、心待ちにしていた大学生活がはじまっても先生や友達に会えず、教室にも入れない…たくさんの失望と落胆、悔し涙を目の当たりにしてきた1年でもありました。しかし、世界には変わらないものもあり、また新たに生まれたものもあります。変わらないもののひとつは、コロナ禍においても学びつづけたい、世界とつながっていたいと願う学生さんたちの熱意と、そんな学生さんたちの支えになりたいと最善の方法を探しつづける先生方の願いです。新たに生まれたもののひとつは、オンラインによるコミュニケーションが日常化したことで、画面越しでも心寄せ合い、ことばを尽くして想いを伝えようとするようになったこと、相手に触れられない空間での「触れ合い」ではないかと思っています。またいつか海を渡ってまだ見ぬ世界の人たちと握手ができる日が戻ってきたら、その時にはもはや共通の話題探しなど必要なく、世界のどこでも「本当に大変だったね」から対話がはじまるはずです。この冊子を手に取ってくださったあなたが今できること、今しかできないことに向き合いつつ、やがて来るコロナ後の世界を迎えてくれますように。そんな願いを込めて、愛媛大学法文学部の先生方、先輩、そして世界各地の卒業生からのメッセージ、アドバイスを集めました。コロナ禍で生まれた『青い地球』の特集号が、希望の一冊になりますように。“There was never a night or a problem that could defeat sunrise or hope.” (明けゆく日や希望を打ち負かすような夜や問題などこれまでにひとつもなかったのだ―バーナード・ウィリアムズ)法文学部 国際交流委員長 今泉 志奈子2020年春ごろからの新型コロナウイルス感染症のまん延は、高校生、大学生の皆さんの学校生活も一変させました。愛媛大学での留学や海外研修を楽しみにし、そして準備を重ねてきた皆さんは、さぞがっかりしたことでしょうね。私もその1人です。2020年4月に、学生とともにアメリカの国連本部での会議に参加予定でした。国際連合主催で行われる高齢化に関する会議です(写真1)。参加登録もすませ、飛行機のチケットやホテルの予約をしていましたので、それはそれはがっかりしました。世界中から集まる人たちもそう思ったのでしょう。オンラインでの国際ミーティングが、複数回にわたって開かれました。しかし思いがけず、2020年は英語三昧の日々でした。私は、関連する国連文書をじっくり読み、翻訳して公表しました(写真2)。皆さんの中で、いつか国連会議へ行ってみたい、また日本や世界の高齢者のことに関心ある方は、ぜひ読んでみてください。コロナ禍は、気持ちがどうしても滅入ってしまう時もありますね。そんな時は、ネット配信の映画やドラマを観ました。ネット配信のよいところは、何度も繰り返して視聴できることです。時間をかけるからこそ、見えてくる独特のフレーズやその国の考え方がありました。何より、好きな映画は自分に力をくれるような気がします。そう思いませんか。しばしば、海外の友人にメールもしました。ニューヨークに住んでいる90代女性の健康は、いつも心配でした。メールの返信がないと、共通の友人に尋ねたりしました。大事な友人が健康でいることを知るのは、何よりあたたかな気持ちになりました。また、クリスマスには、北欧の友人らからカードやプレゼントが届きました。会えなくても、友人に支えられていることを実感しました。今は、移動の自由を制限されています。いつか留学や海外研修に行ける時を楽しみに、大事な人や事柄とつながりながら、できることをしていきましょう。鈴木 靜(社会保障法)今は、大事な人や事柄とつながりながら過ごす日々高校生および在学生の皆さん。愛媛大学の法文学部の権(コン)と申します。韓国から留学生として来日し、18年(東京で7年半、愛媛大学に着任してから10年半ほど)が経とうとしています。日本への留学を決心した時には、その10年後に日本の大学生に行政法を教えているとは想像もできなかったことです。こんな私にとって、海外留学というものは、間違いなく自分の人生を大きく変えた一大事件であります。もちろんそれはいい方向への事件です。「学問の世界では国境がない」と言われていますが、まさにそのとおりですね。さて、昨今のコロナ禍の中で、思うように海外渡航ができない時期です。このような時期だからこそ、皆さんに伝えておきたいのは、海外渡航をあきらめたり、その機会を見逃したりするのは本当にもったいないということです。海外に行き、そこの人々と積極的にコミュニケーションをとることで、内向的な性格が大きく変わる人もいます。また、多様な世界観を持っている人と接する、そこの文化や地域・国を理解するといったことは、自分の世界観を大きく広げることにもつながります。これらのことは、間違いなく皆さんの人生を豊かにする大きな材料となるでしょう。日本への留学が私の人生を変えたきっかけとなったように、皆さんもそのようなチャンスに巡り合えることができることを強く願っています。国際交流といっても、学術的・専門的知識や外国語の習得のための留学も含まれますが、それだけではありません。海外ボランティア、海外文化体験などさまざまな形があり、愛媛大学法文学部でもさまざまな国におけるさまざまな内容のプログラムを用意しています。今のコロナ禍が終息したら全力で皆さんの海外渡航をサポートしたいと思います。そして、その時、自分の知性、感性、経験を駆使したダイナミックな海外体験ができるように、今こそしっかりその準備をしておくべき時期ではないでしょうか。権 奇法(行政法)外国人教員からの海外渡航のおすすめ皆さんへのメッセージ国際交流委員の先生方よりStudy abroad brochure 20201コロナ禍、そしてコロナ後の世界へオンライン空間でも笑顔は最高!国連本部にてネルソン・マンデラとともに写真2:「賃金と社会保障」1764号2020年写真1:2019年国連・高齢化に関する会議の様子憲法裁判所にて国会議事堂にてニュージーランドの大切な友人、Mabelとニュージーランドの空と海食事の時間平壌方面の乗り場(実際つながっているわけではありません)

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