愛媛大学法文学部 青い地球交流記2020
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Study abroad brochure 20205“Stayhome!”(家から外に出てはいけません、日本から海外に行ってはいけません)の状態が続く今だからこそ、日本でできることはあります。私からの助言は「イギリス文学作品を原書で読みましょう」です。おすすめはアガサ・クリスティー(1890~1976)です。彼女の作品は、聖書とシェイクスピアに次いで、世界中で読まれています。シェイクスピアは今から400年以上も前の人、聖書に至ってはいつ書かれたのかもわからないほどの歴史があります。その点クリスティーは、没後50年にも満たないのに既に第3位の地位を獲得している。「クリスティーさん、あなたはすばらしい」の一言に尽きます。おすすめする理由はそれだけではありません。まず彼女の作品は原書でも翻訳でも容易に手に入ります。それに彼女の作品は会話が主体でとても読みやすい。これが一番重要です。いくら人気があっても、英語が難解だと原書で読む意欲が失われてしまいますから。私はイギリス文学の授業でよく言うのですが、難解な文学作品がこってりとした中華料理なら、クリスティーの英語は「そうめん流し」のように「スルッ」と頭に入ります。そして、クリスティーの愛読者は、調べたわけではありませんが、どちらかと言えば高齢者の人が多いという印象が強い。だから、この機会にアガサ・クリスティーの作品を読んでおけば、“Go Abroad!” (ちなみに “Go to Abroad!”は非文法的です)の状態になった時、それが意外とあなたの海外体験を有意義なものにしてくれるかもしれません。ホームステイ先(ホストファミリーの構成)は、若い夫婦に子供一人と犬一匹、シングルマザーとその子供という場合もあれば、老夫婦や一人暮らしの高齢者という場合も少なくありません。なぜなら彼らの家には、子供が巣立って行った後、留学生を受け入れる部屋があるのですから。その部屋に入る若いあなたが、もしアガサ・クリスティーの愛読者だったら、おじいちゃんやおばあちゃんとの距離は一気に縮まること間違いなしです。ひょっとすると毎日夕食後アガサ・クリスティー談義で盛り上がるかも。実際、シェイクスピアを専攻していた私の学生は、ホームステイ先(イギリス・マンチェスター市)のホストマザーがたまたま国語(つまり英語英文学)の先生で、「私は大学でシェイクスピアを専攻しています」と言ったがために、毎晩のようにシェイクスピアの話をしなければならなくなったというケースもありましたから。■井上 彰(英米文学)今、目の前にあるものを最大限に生かそう!■野上 さなみ(ドイツ言語文化)2020年に始まった移動規制により、外国に出向くことができなくなっていますが、チャンスはいつ巡って来るか分かりません。私自身もドイツ語能力を維持するために何をすべきか、毎日模索しています。そんな中、学生時代に聴いたラジオ語学講座の先生の言葉を思い出しました。「自分が学生のころには普及していなかった家庭用ビデオなどを使えば、皆さんは外国語のリスニング練習が繰り返しできるのに、なぜもっと活用しないのか?」という主旨でした。先輩方によるこのようなメッセージは、現在の私達にも当てはまると思います。インターネットの普及により、地球の裏側の情報も詳細に入手できるようになっています。私は、訪れたい街や施設があると、関連書籍をたくさん読むのに加えて、そのドイツ語HPを「バーチャル訪問」して「予習」に役立てています。たとえば、ヴィーンの美術史博物館公式サイトは、館長自らがハイライト作品の解説をする動画を公開しています。動画はクリックするだけでドイツ語が流れてくる上、ドイツ語字幕もつけられることが多く、耳を慣らすには大変便利です。しかも、繰り返し再生できるので反復練習にはもってこいです。このように恵まれた環境は、私の学生時代には想像もできなかったことです!いきなりリスニングはきついな…という人は、自分の趣味や興味のあることにテーマを絞った閲覧がお勧めです。例えば、お料理が好きならレシピの、動物が好きなら動物園の、車が好きなら自動車ブランドのサイトを…という具合に閲覧するうちに、自分の好きな分野の語彙は増えていくでしょう。すぐには渡航できなくても、できるだけ現地の「言語」に近づく努力は続けて欲しいと思います。遠隔授業が続く中、たとえパソコン画面越しではあっても、「ドイツ言語文化概論」などの授業を通して、できる限りリアルなドイツ語圏の様子を伝えられるよう、私も頑張っていきたいと思います。今、目の前にあるものを最大限に生かして、一緒に勉強していきましょう。今、取得しておきたい期限切れのないパスポート■柳 光子(フランス言語文化)海外へ飛び立てる日がいつ戻ってくるのか見えない状況下、外国語の勉強を続ける意欲を保つことに難しさを感じている方も多いのではないでしょうか。限られた学生生活の年月が減っていくなかで皆さんが焦りと不安に駆られるのは無理もないことです。それでも現代の若者だからこそできること──動画配信サービスで見るフランスのテレビドラマ、青少年向けの現地ニュースアプリ、海外のプレイヤーとの交流ができるゲームなど──を楽しみながら語学力を磨いている学生たちもいます。頼もしい限りで、こちらも励まされる思いです。もちろん現地での体験の代わりにはなり得ないにせよ、今は安全な形が最優先。勉強も海外体験も、本当に命を賭けてしまっては何にもなりません。王道とも言える楽しい勉強法として、読書を通じての仮想旅行もお奨めです。フランス語は17世紀半ばに現在の形に整えられたあと、ほとんど変化せず現在に至っている言語ですから、愛媛大学で1年間フランス語の基礎を学べば、「リサとガスパール」シリーズや『星の王子さま』はもちろん、ヴェルサイユ宮廷時代の文献にも挑戦できるようになります。ルイ14世は自ら大庭園の案内書を執筆し、そこを市民が散策することすら許していました。いつか憧れの宮殿を訪ねることができたら、太陽王ご推薦の散歩コースを回ってみてはいかがでしょうか。その日を夢見て、今は書物を介した空想の散策を楽しみましょう。世界へ飛び出していくことが叶わない日々であっても、書き残された文献や作品はかえってその威力を発揮します。むろんリアルな現地体験に勝るものはありませんが、ヴァーチャルとはまた異なる、「ことば」がつくり出す世界は今も、どんな時でも、皆さんを待っています。安全に、あまりお金もかけずに体験できる世界です。そこへのパスポートはフランス語力。身につけておいて損はありません。本物のパスポートを携えて現地に向かうその時、習得したフランス語は皆さんに特別な扉を開いてくれることと思います。シェイクスピア、スフィンクスたちを従えて大英博物館で大人気のお土産シェイクスピア、スフィンクスたちを従えて大英博物館で大人気のお土産折り鶴で国際交流折り鶴で国際交流女王陛下と一緒に女王陛下と一緒にヴェルサイユ宮殿「鏡の間」ヴェルサイユ宮殿「鏡の間」ルイ14世(在位 1643‐1715年)ルイ14世(在位 1643‐1715年)学習2年目から原書も読めます!学習2年目から原書も読めます!ヴェルサイユの庭園(の一隅)ヴェルサイユの庭園(の一隅)市街中心から見える宮殿(ヴィーン)市街中心から見える宮殿(ヴィーン)美術史博物館の内部(ヴィーン)美術史博物館の内部(ヴィーン)旧市街地の馬車(ヴィーン)旧市街地の馬車(ヴィーン)自分で瓶詰めして購入するお酒自分で瓶詰めして購入するお酒部屋に籠って原書を読もう!先生からのワンポイント・Tips for Studying at Home

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