愛媛大学法文学部 青い地球交流記2020
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Study abroad brochure 20208皆さんもご存知のとおり、2021年2月1日、ミャンマーで軍事クーデターが発生し、アウンサンスーチーさんらが拘束され、自宅に軟禁されたそうです。スーチーさんの自宅軟禁は、4度目になります。実は私は8年前、スーチーさんに間近でお会いする機会に恵まれました。彼女の来日を、沿道に立って歓迎した人々の中に私もいたわけです。スーチーさんは、凛として気高く、不思議なオーラを放っていて、圧倒的な存在感がありました。忘れられません。世界には、現在のスーチーさんのような「政治犯」、つまり「反政府的」だという理由で逮捕され収監されたり、あるいは亡命させられたりしている人が、たくさんいます。唐突に思われるかもしれませんが、また、大げさかもしれませんが、私は、新型コロナウイルス感染拡大によって、それまでの日常生活が激変してしまって以降、しばしばそうした政治犯の境遇について考えるようになりました。もちろん、政治犯の境遇と、コロナ禍の制限の状況は、まったく異なります。しかし、自由を奪われた状況の中で、いかにして正気を保つことができるのか、というテーマ設定の下では両者につながりがあるように私には思えたのです。インド初代首相を務めたジャワーハルラール・ネルー(1889~1964)も、長期の入獄を体験した人物です。インドは、かつて、イギリスの植民地でした。ネルーはインド独立運動に身を投じ、たびたび捕らえられ、投獄されました。ネルーが刑務所に入れられていた期間は延べ約9年に及びます(山折哲雄『ガンディーとネルー―その断食と入獄』評論社1974年)。ネルーはその刑務所生活を、いったい、どのようにして日々耐え忍んでいたのでしょうか。彼が入獄中に執筆した書物の中で、そのことに触れている一節をご紹介しましょう。…しかし、いつも私をみたしていたのは行動であり、行動を思うことであった。そして行動の自由を奪われている時には、私は自分が行動のために準備しつつあるのだと想像していた。(ネルー『インドの発見』岩波書店1953年、11頁)大学に入ったら留学したいと夢見ていた皆さん、海外渡航ができなくなって落ち込んでいる皆さん、そして、移動制限や外出自粛で気が滅入りそうになっている皆さん。自由を奪われている時には、行動を思い、行動のために準備しつつあるのだと想像してみてはいかがでしょうか。自由を奪われている時には■石坂 晋哉(アジア地域研究)私はアフリカのウガンダという国でのフィールドワーク(FW)引率を担当しています。ウガンダまでのフライトは長く、現地の滞在にも様々な困難が伴うため、毎年大変だったのですが、今年度のようにそれができなくなってしまうと、寂しいものです。ウガンダなどのアフリカ諸国を訪問することの魅力は、なんといっても、日本とはまったくの別世界に身を置くことができることです。日本とは気候や風景や慣習が異なるだけでなく、インフラや安全衛生環境が日本と完全に異なります。バイクタクシーに乗っている時など「生きていること」を実感できます。「This is Africa」というフレーズにはいろいろな意味が込められています。何が影響しているのかわかりませんが、アフリカを訪れる先進国の人の評価は二極分化すると言われます。アフリカの「水」が合う人は、そこに住んでいる人たちと自分たちの共通点を感じることができる人なのだと思います。逆に合わない人は、援助・被援助のステレオタイプから抜け出せない人なのだと思います。日本人は、アフリカとの間に植民地支配の歴史がないので、経済格差はあっても、比較的友人として受け入れてもらえやすいのではないかと思います。さて、ポスト・コロナを見据えて、今やっておくべきと思えることは二つあります。一つは自然の中でのソロ・キャンプです。現在、感染拡大防止のために「三密」を避けることが推奨されており、ソロ・キャンプはこのような時代にうってつけのアクティビティですが、同時に途上国(の田舎)の日常を疑似体験できます。バーベキューはたまにやるので楽しいですが、途上国では日課です。いかにそれが大変なことか、ソロ・キャンプを通じて自分で一通り経験しておくと、アフリカでのFWをより充実したものにすることができるでしょう。もう一つは、皆さんが現在体験しているコロナ禍を記録しておくことです。現在、世界は同時に共通の(あまりうれしくない)体験をしています。このような現象はおそらく世界史上初めてではないかと思います。ただし、同じ災厄でも、住む地域によってその経験は様々であるはずです。そして、このグローバルな災厄のローカルな体験をシェアすることの需要は高いといえます。これまでは国際交流するにあたって、まずネタを用意する必要がありました。そして、そのネタはあまり心がこもっていないことがしばしばありました。しかし、コロナ禍の経験であれば、全員にネタはすでにあります。あとは聞いたり話したりするだけです。コロナ禍のおかげで逆説的にハードルが下がるポスト・コロナ時代の国際交流に備えましょう。コロナ禍によりハードルの下がる国際交流■三上 了(国際協力論) アドバイス!社会科学編シク教徒の方にターバンを巻いてもらいましたシク教徒の方にターバンを巻いてもらいましたウガンダの仕事仲間ウガンダの仕事仲間首都カンパラの下町風景首都カンパラの下町風景街角にたたずむバイクタクシー街角にたたずむバイクタクシー地方へ向かう乗合バス地方へ向かう乗合バス留学中の愛大生2名と共にジャワーハルラール・ネルー大学にて留学中の愛大生2名と共にジャワーハルラール・ネルー大学にてインドの友人(中央)のご自宅で梶原先生(右)と一緒にパチリインドの友人(中央)のご自宅で梶原先生(右)と一緒にパチリ

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