佐藤 智秋教授

さとう ともあき / SATO Tomoaki

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専門分野:統計学
教員からのメッセージ
 今から2千年ほど前,遠く古代ローマ帝国において人口調査が行われていました。新約聖書には,この調査を受けるために,ある一組の夫婦が故郷のベツレヘムに戻り,その時,一人の男児が産まれたと書かれています。我が国においても,日本書紀の中に人口調査についての記述があります。このころの人口調査は,専ら徴兵や徴税のために行われていました。
 さて,現代の日本では,5年に一度,国勢調査と呼ばれる人口調査が行われています。もう少し説明すると,日本の人口は,5年に一度,全世帯を対象とする国勢調査によって把握され,国勢調査と国勢調査の間は,国勢調査人口にその後の出生数や死亡数を加減し,毎月の人口が推計されています。
 日本では人口減少が社会問題になっていますが,国内の人口は2008年にピークに達し,その後,減少が始まっているのがこの人口推計により捉えられています。ところが,あまり注目されていませんが,さらにその後の2010年10月に実施された国勢調査で,国内人口は過去最多を記録します。矛盾してみえますが,どちらも事実です。要するに,真の人口は掴めていません。ライフスタイルの多様化などから,国勢調査の捕捉率の低下が危惧され,2010年の国勢調査時に調査方法を変更したことが,混乱の一原因になっています。
 21世紀の我が国の関心事は広範囲に渡り,そのための統計調査も膨大な数になっています。大勢の人間が,統計調査の結果を使いながら,巨大な装置を操作しようとしている姿をイメージしてみてください。残念ながら,私たちは必要とされる統計もその使い方も十分に獲得できていません。まだまだ,危なっかしい舵取りをして行かざるを得ないようです。
 ここまで国家による統計調査について触れましたが,今日では,社会,組織,個人が,何らかの判断や予測をする際に,統計を利用することが不可欠になっています。授業では,現行統計の特徴を理解し実際に利用してみながら,課題解決のための統計の利用方法を考えていきます。こうした統計学を一緒に学んでみませんか。