西 耕生教授

にし こうせい / NISHI Kosei

,

専門分野:日本文学
教員からのメッセージ
 “百聞は一見に如かず”とは古典にかんしても真理である。

 僕は顕微鏡を使ってはならない
 (自分でひとつのプレパラートになって)
 僕は望遠鏡を使ってはならない
 (自分の脚で距離を消し)
 僕は只生まれたての眼だけで見よう
 〔谷川俊太郎『十八歳』東京書籍(集英社文庫所収)〕

 重宝すべき「鏡」がそなわる現在だからこそ,それらを使いこなすことのできる「眼」や「手」や「頭」をもつよう心がけること。例えばカメラの「レンズは,裸眼では見ることのできない物を見えるようにし,私たちに現実を小さく見せる可能性を与えます。(ルイジ・ギッリ『写真講義』みすず書房,93頁)」そのように,文学の言葉は,ふだんさわることのできないものをさわれるようにし,私たちに現実を異なる角度からとらえる可能性を与える地平へと導いてくれるのではないだろうか。文学の魅力のひとつには,この〝ことばを〈介して〉さわる〟ということがあるように思われる。〝自分を忘れる〟――「決まりごとや,前もって細かく決められた見取り図を持たずに出発し,型に嵌らない柔軟な方法で(前掲書18頁)」言葉が築きあげる世界に分け入っていこう。