愛媛大学法文学部 創立50周年記念誌
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102第2部 法文学部の思い出松山高等学校を偲ばせるもの 「法文学部50年史」にも書かれているように、愛媛大学法文学部の前身校は1919(大正8)年創立の松山高等学校です。全国では13番目の高等学校になるようですが、愛媛県に(というよりも四国に)初めて作られた高等教育機関でした。その高等教育機関としての松山高等学校を偲ばせるものは、1つは「章光堂」(現教育学部附属中学校講堂)ですが、法文学部にもいくつかあります。 法文学部哲学研究室には、現象学の創始者エトムント・フッサール(Edmund Husserl, 1859―1938)が編集した『哲学及び現象学的研究年報』(Jahrbuch für Philosophie und phänomenologische Forschung)全11巻の現物があります。これは松山高等学校が購入したもので、愛媛大学図書館蔵書として引き継がれているものです。 この11巻の中にはフッサールの重要な作品も含まれていますが、ここではマルティン・ハイデッガー(Martin Heidegger, 1889―1976)の『存在と時間』(Sein und Zeit, 1927)を紹介します。『存在と時間』は20世紀を代表する哲学書とまで言われますが、最初に出版されたのは、この『哲学及び現象学的研究年報』第8巻の掲載論文としてでした(同時に別冊として単行本としても出版されました)。ですから、哲学研究室にある『哲学及び現象学的研究年報』第8巻が、『存在と時間』が世に現れた最初の姿をそのまま伝えているものということになります。 『哲学及び現象学的研究年報』第8巻、1927年。内表紙と1頁目に「松山高等学校図書館」の印章が押されている(写真提供:松本長彦教授)

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