愛媛大学法文学部 創立50周年記念誌
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36第1部 法文学部50年史教員組織とコース制の変化7)教員組織をめぐる問題 法人化は各大学にマネジメントなどについて自由裁量の余地を与えたが、運営費交付金の問題など財政上の問題もまた突き付けることになった。とりわけ人件費の問題は教職員の人材確保という点で大学組織の根幹に関わるものであり、例えば教員補充が行われないとなれば、カリキュラムや学問体系の維持も困難となることが予想された。 もとより国立大学の予算をめぐっては、文部省は戦後から1999(平成11)年度まで長らく続いてきた「積算校費制」を廃止し、2000(平成12)年度から「教育研究基盤校費」へと変更していた。この変化により、教員・学生・組織からの「ボトムアップ」型の「積み上げ」式予算編成から、「予算の一括配分をうけた大学の本部ないし執行部が、独自に配分の基準や額を決める「トップダウン」型の予算編成の、新しい方式を導入することが可能になった23)。 同時に、この予算編成システムの変化は教員組織のあり方にも影響を与えた。これによって、小講座制のような研究上の専門が予算編成上に持つ意味合いは薄れ、むしろ大講座制や学科目制のように大きな教員組織を作り(あるいは旧来の形態に囚われない新たな教員組織を新設し)、大学や学部の定める教育上の必要性に応じてスタッフを配置するあり方と親和性が高まったといえる24)。 法文学部での教員組織の動きを見てみると、法学研究科の設置(1981年4月)により法学科は修士講座制となっていたが、1996(平成8)年における学部改組によって、旧法学科と旧経済学科の教員は総合政策学科への改組によって政策情報科学、ガバメント、マネジメント、比較経済システム、応用法政策の5大講座制へと移行し、旧文学科の教員は人文学科への改組によって人間科学、日本アジア文化、欧米文化の3大学科目に所属となった。さらに1998(平成10)年の法文学研究科の開設により、人文学科教員組織も3大講座へと再編されることになった。 学部創設から3学科時代を経て、各学科が専門分化し、将来学部として独立することを目標としていたかつての流れからすれば、大学科目制を経て大講座制へと再編されたことは逆行を意味した。とはいえ、こうした大講座制への移行には、小講座制に比べればゆるやかな研究上の教員組織の繋がりとなったものの、教員組織に必要とされる研究上の専門性と教育上の運用性とのバランスが示されていた。 しかし積算校費制の廃止によって、講座制が有していた研究組織としての意味合い

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