鈴木靜「藤原精吾弁護士講演録『旧優生保護法事件7月3日最高裁大法廷判決-優生保護法による強制不妊手術と障害者を差別する社会』」

 2024年7月3日、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法による人権侵害を認め、憲法違反および国家賠償を認める判決を下した。1996年まで存在した優生保護法のもとで、障害のある人は強制不妊手術等を実施してきたことが問われた裁判であり、2024年まで11か所の裁判所で起こされた事件である。

 判決があった同月26日、愛媛大学において、兵庫訴訟原告側弁護団長、藤原精吾弁護士に「旧優生保護法事件7月3日最高裁大法廷判決-優生保護法による強制不妊手術と障害者を差別する社会」についてご講演いただいた。藤原弁護士は、1967年に弁護士登録し、堀木訴訟や原爆症認定裁判、障害年金不支給処分に関する事件など多数取り組んできた。旧優生保護法事件の兵庫訴訟原告弁護団代表を務められ、最高裁判決後も優生思想の根絶のための課題に立ち向かっている。

 本稿は、講演内容について再構成し、愛媛大学法文学部論集社会科学編第58号に掲載したものである。なお、下級審や国政の動きは、講演時の状況である。

 藤原講演は、最高裁判所大法廷の判決当日の様子、判決の意義と内容だけでなく、原告である障害のある人がおかれてきた状況、強制不妊手術などの事実を知り弁護士としてどのような姿勢で取り組んできたか等、臨場感をもって話された。

 講演で、とりわけ強調したのは、最高裁判決後の現在も、優生問題は終わっていないことである。優生保護法制定は1948年であったが、その前身である国民優生法にさかのぼり、時代状況を詳しく紹介した。ゴルドンが主張した優生思想は、第二次世界大戦中のナチスのホロコーストやT4作戦として実施され、民族や障害のある人を排除し死に至らしめた歴史である。日本においては日本国憲法のもとで、優生思想を引き継ぐ優生保護法が制定されたが、長らく障害のある人の不妊手術を行い、また学校教育でも障害のある子の出産を防ぐことを教え続けた。その結果、現在も津久井やまゆり園事件などが起きている。この現実に直視し、国内法政策を見直し、優生思想の根絶に取り組む必要があると結んだ。

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