秋谷裕幸「原始閩語中的舌葉塞音声母及其相関問題」

「原始閩語中的舌葉塞音声母及其相関問題」(閩祖語における後部歯茎閉鎖音節頭子音及びその関連諸問題)が『語言学論叢』2022年第1期58-86頁(2022年8月26日、北京大学出版社)に発表されました。

本論文ではNorman(1973)が閩祖語に再構した歯茎閉鎖音の系列を歯茎閉鎖音と調音点がそれよりもやや後ろの後部歯茎閉鎖音の系列に二分できると論じています。後部歯茎閉鎖音の再構により、音節頭子音の方言間対応のみならず、歯茎閉鎖音一系列の子音体系では例外と見なさざるをえなかった、例えば「乾いた」石陂方言diau2(cf.廈門方言ta1)に見られるようなiを後部歯茎閉鎖音が条件となる規則的音韻変化の結果として理解することができるようになる点が新機軸と言えるでしょう。ただ論文でも指摘されているように、方言間の対応に例外が多いことがその主張の難点となっており、今後の改善が望まれます。

『語言学論叢』は1957年に北京大学中文系において創刊された言語学学術誌です。初期の執筆陣には王力、周祖謨、高名凱、朱徳煕ら錚錚たるメンバーが名を連ねています。2021年に国家新聞出版処により定期刊行物化が承認され、今期がその第一号となります。