太田響子「危機管理と「計画」の諸相:都道府県の計画行政における二重性分析」(基盤研究(C)、研究代表者、2021~2024年度)

本研究は、2020年度まで取り組んでいた科研費(若手研究)による危機管理行政の組織間調整の研究を引き継ぐものとして2021年度より開始したものである。引き続き新型コロナウィルス感染症の影響が続く中ではあるものの、徐々に現地に赴いての調査が実施できるようになったのは、2年目となる本年度の大きな幸いであった。本研究の一環で参加している(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構の「南海トラフ地震に備える政策研究」および「南海トラフ地震発生時における行政の在り方に関する研究会」メンバーらとともに、三重県(三重県庁、伊勢市、松坂市、南伊勢町、2021年)、徳島県(徳島県庁、徳島市、美波町、2022年)、兵庫県(兵庫県庁、2022年)への現地調査に赴くことができた。現地調査では、自治体の実務現場における南海トラフ地震対応を中心とする対策や課題についてヒアリング・意見交換を行うことができた。加えて、沿岸地域における津波被害の「最後の命の砦」ともいうべき津波避難タワーの視察などを行った。伊勢湾岸に点在する古代遺跡のような巨大なタワーや、南伊勢町や美波町ののどかな漁村にたたずむ小規模なタワーなどを見学するにつれ、やはり現地でその土地の状況をじかに見聞きし、現場における対策の工夫や苦悩をお伺いすることは、研究テーマを深く理解しこれに向き合うために不可欠なことであると再確認した。

今後の研究の展望として、さらなるヒアリング調査や行政資料等の調査を元に、発災時の避難計画や県から市町村へのプッシュ型支援に関する計画やマニュアルが、関係機関の間でどの程度調整され実効性が担保されているのか、といった視点から、具体事例の検証を進めていきたい。

伊勢湾沿岸部の田園風景にそびえる伊勢市二見西津波避難タワー