三上了 ”Effect of Participation and Alignment on the Sustainability of Development Aid Output: Evidence from a Field Experiment in Uganda.”

Mikami, S. Effect of Participation and Alignment on the Sustainability of Development Aid Output: Evidence from a Field Experiment in Uganda. Studies in Comparative International Development 57, 475–496 (2022). https://doi.org/10.1007/s12116-022-09374-9

海外援助には、累積的な効果がみられないことが多いという長年の問題があります。活動実施中は援助する側もされる側も活気に満ちてお互い幸せな気分になるとしても、活動期間が終わって外部からの援助者が去ると、現地の援助された側は教えられた事柄や与えられたモノを使わなくなることが多いからです。その原因は、外部の支援者たちが、現地の状況や受け手の優先順位に注意を払わずに、自国で機能するものを善意から押し付けてしまいがちなため、援助された側にとっては自主的な継続のコストが高く、また当事者意識も持てないために起こると言われています。

この問題への対策として有効だと援助業界で信じられてきたのが、援助内容を現地に合わせたり、援助される側を活動内容の決定に参加させたりするというアプローチでした。ところが、このような対策が取り入れられてから久しいにもかかわらず、依然として持続性を持たないケースがほとんどです。つまり参加や現地に合わせるというアプローチの有効性が疑われています。

そこで本研究では、有効だと広く信じられてきた上記の解決策の実際の効果を、ウガンダでのフィールド実験で検証しました。題材として使ったのは家庭での飲料水浄化習慣を普及する活動です。途上国の農村部では、飲料水は家から離れたところから汲んできて貯蔵して使っている場合がほとんどなので、飲む際に殺菌することが水因性疾患の予防には不可欠ですが、この一手間が、毎日となるとなかなか面倒で普及しておらず、それを後押しする援助がたくさん行われています。本研究では、この支援におけるアプローチを色々変えて、アプローチごと援助終了後の飲料水浄化習慣の持続性を比較しました。

その結果、二つの点が明らかになりました。一つは、援助内容を現地に合わせると(この研究では、現地であまり馴染みのない塩素殺菌ではなく、日々行われている炊飯のついでにできる煮沸殺菌するという方法にすると)、逆に持続性がさらに落ちるという点です。もう一つは、援助内容(つまり上述の殺菌方法の選択)を参加型で決めようが一方的に押し付けようが、持続性には影響しないという点です。ここから、参加や現地に合わせるというアプローチが導入されても持続性問題が一向に解決されてこなかった理由が明らかになりました。今後は、持続性を高めるための別のアプローチを新たに模索することが課題となります。

なお、掲載誌のStudies in Comparative International Developmentは米国のSpringer Nature社から年4回出版されている政治・国際関係の学際的雑誌で、2021年のインパクトファクターは2.591です。

飲料水の運搬と貯蔵に使われるジェリカン