幸泉満夫「岩田系土器群の研究」

 論文「岩田系土器群の研究」が、『古文化談叢』第88集の巻頭に掲載されました。
(2023年1月26日刊行、九州古文化研究会、pp.1-59頁、査読付、図1)。
 本論文では、西日本における縄文時代の終焉を象徴する「岩田系土器群」について論じています。同土器群は、縄文後晩期土器の無文化、および斉一化に至る“要”として、学史上、象徴的に扱われてきました。しかしながら、その成立過程や変遷、西日本内部における地域間関係等、不明瞭な点が多く、長らく、当該期研究の進展にも支障をきたしていました。筆者は、学史上名高い「岩田第四類土器」と、その前後の系列の土器群を対象に、新たに「岩田系土器群」を設定するとともに、徹底した分類基準の構築をもとに、西日本における関連遺跡、合計103箇所の該当資料に関する悉皆的な調査研究を重ねた結果、以下に記すような一連の成果を導出することができました。
 今回の成果は、主に3点です。① 岩田系土器群の成立過程の復元、② 前後7段階に及ぶ型式細分(図2)、③ 学史上、議論の重ねられてきた西日本後晩期土器の“斉一化”現象をめぐる地域間関係の変遷復元、が挙げられます。本論文の発表により、西日本における縄文晩期土器群の“斉一化”に向けた背景が、より鮮明に復元されたといえるでしょう。
 『古文化談叢』は1974年、九州古文化研究会が創刊した、歴史ある考古学系の学術誌です。日本国内はもとより、広く、東アジア圏各地からの投稿、幅広い考古学、文化財関係者層によって支持され続けています。ISBN:1883-0676、B5判、第88集の市販価格は2,640円(税込)。

図1 古文化談叢 第88集 表紙

図2 岩田系土器群の変遷(抄)(不許転載)