青木理奈、鈴木靜、福井秀樹、小佐井良太(福岡大学法学部)、石坂晋哉、太田響子、池貞姫、十河宏行、中川未来「コロナ禍における法文学部学生の被災記録の収集、保存」

 本研究は、コロナ禍における法文学部生の被災の実態を明らかにするとともに、その記録を収集・保存することを目的として、新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言が初めて出された2020年度より継続して取り組んでいる。なお、愛媛大学教育改革促進事業及び法文学部戦略経費による助成金を受けている。
 具体的には、法文学部生を中心とした学生にオンライン調査でアンケートを実施し、体験や思いをまとめた手記を集め、座談会で聞き取り調査を実施している。2022年度のアンケート調査は、対面授業が始まったことによる学業および生活上の変化について焦点をあてたものであり、3年ぶりに学生間の交流が活発化したことをポジティブにとらえている学生が大半であった。ただ、90分の授業時間がストレスに感じる学生や空きコマの使い方に戸惑う学生が4割にものぼったり、メンタルヘルスに困難を感じている学生は一定数いて、その原因が長期化するコロナ禍のストレスであるかもしれないことに留意すべきと指摘した。
 また、手記や座談会でも生の声が届いている。2022年度の手記では、コロナ禍での学生生活は3年目を迎え、対面授業が再開したこともあり、アンケート同様、大学生活全般にわたって肯定的な内容が目立つようになった。多く見られた記述の一つに、3年生、4年生の就職活動事情として、オンライン説明会や選考が標準化されてきたことがあった。そして、このオンライン就活については、金銭的・時間的に便利な反面、周りの様子が見えないことでの不安な気持ちも詳細に述べられていた。また、座談会時の発言と共通することとして、自宅で説明会や面接に参加する際、Wi-Fi状況が不安定になることがあるので、大学で空き教室、会議室を借りることができれば心強いとの声が複数上がるなど、オンラインも併用された就活の課題も増えてきているようだ。
 さて、この新型コロナウィルス感染蔓延は、誰も予期しえなかった深刻かつ長期にわたる未曽有の自然災害である。愛媛大学も、感染状況にあわせて教育提供体制に変更を迫られ、その対応は4年目を迎えている。2022年度から対面授業が原則となったが、感染前に完全に戻ったとは言えず、ウィズコロナ・アフターコロナとなる今、これまでにない新たな対応が求められているだろう。今回の自然災害のような長期化する非常事態に際し、法文学部学生の学修上・生活上の実態を継続的に記録し、法文学部の緊急時対応等のデータを蓄積するということは、新型コロナウィルス感染蔓延のさらなる長期化に備えるだけでなく、いずれ発生すると予測されている南海トラフ大地震等の大規模自然災害時の、緊急時の学部運営、学生支援、教育提供体制の検討に寄与するものだと自負している。
 2023年度は、コロナ禍1年目に入学してきた学年が4年生となり、卒業する年度である。今後も継続的に調査を行い、この4年間の学生の様々な意識や行動の変化を把握していくと同時に、他大学や教員を対象にした調査も実施する予定で、比較研究、教員視点での変化も把握していきたい。

研究成果の一部は大学紀要に掲載され、ウェブサイトで読むことができます。