Emil Julius Gumbel Prize(研究論文)を受賞しました(福井秀樹)
[Open Access] Fukui, H. (2023). Evaluating Different Covariate Balancing Methods: A Monte Carlo Simulation. Statistics, Politics and Policy, 14(2), 205-326.
https://doi.org/10.1515/spp-2022-0019
https://www.ll.ehime-u.ac.jp/research/5107
法文学部・研究ウェブサイトで2023年11月16日に紹介された標記の研究論文が、学術誌Statistics, Politics and Policy (SPP) の2023年Emil Julius Gumbel Prize(エミール・ユリウス・ガンベル賞)を受賞しました。この賞は、SPPに掲載された論文の中で最も優れた論文に対して、年に1度、編集委員会により授与されます。
編集長であるウヴェ・ヴァグシャル(Uwe Wagschal)教授(フライブルク大学)からの通知によると「選考は編集委員会の評価と論文のダウンロード数にもとづいて行われた」とのことです。実は、本論文が批判的検討の対象とした論文の筆頭著者ゲイリー・キング(Gary King)教授(ハーバード大学)もSPPの編集委員です。キング教授が本論文をどのように評価したかは分かりません。しかし、少なくともキング教授が本論文を読んで楽しい気分になることはないであろうことは想像できます。このような背景を知る著者としては、今回の受賞に際し、本論文の大幅な改善につながった査読者の詳細なコメント(なんと9ページにびっしり4,093ワード!)に感謝の思いを新たにすると同時に、付録を含めると100ページ、13,000ワードを超える本論文の掲載を認めてくれた編集委員会の寛大さと、客観的批判に対して公平・公正に開かれた学術誌としてのSPPの姿勢にあらためて感銘を受けた次第です。
なお、編集長ウヴェ・ヴァグシャル教授の所属するフライブルク大学のウェブサイトには、エミール・ユリウス・ガンベル賞およびガンベル自身について以下の説明がありますので紹介いたします。
エミール・ユリウス・ガンベル賞は、ドイツ系アメリカ人の数学者、政治家、政治活動家であったエミール・ユリウス・ガンベル(1891年ミュンヘン生まれ、1966年ニューヨーク没)にちなんで命名されました。エミール・ユリウス・ガンベルは1920年代にハイデルベルク大学で講師を務め、哲学科で統計学を教えました。ガンベルは1922年に出版された著書『政治的殺人の4年間』で一躍有名になりました。本書では、右翼と左翼の犯罪者による政治的殺人と犯罪の量刑が、統計データによって体系的に検証されました。ガンベルは、ワイマール共和国の量刑判断には強い政治的偏向があることを見いだしました。エミール・ユリウス・ガンベルは、その政治的・ユダヤ的宗教的信条から、後にニューヨークへの移住を余儀なくされ、コロンビア大学に勤務しました。今日、ガンベルは一般化極値分布(ガンベル分布)に関する優れた業績で統計学の分野で知られています。
University of Freiburg – Statistics, Politics and Policy (SPP)
https://www.politik.uni-freiburg.de/professuren/vergleichende-regierungslehre/statistics-politics-and-policy
※福井教員のその他の研究業績についてはresearchmapをご参照ください。
https://researchmap.jp/read0064481