
教員からのメッセージ
法律という言葉を聞いてなにを思い浮かべますか。多くのひとが憲法や民法、刑法など、さまざまな「○○法」をイメージすると思います。そして、これらの法律を学び、法に関する知識を身につけることが法学であると考えるのではないでしょうか。このような理解は間違いではありません。法的知識を身につけることは言うまでもなく大事なことです。しかし、法律を学ぶひとの目標は、身につけた法的知識を使って問題解決できるようになることです。そのためには、相手を納得させる説得力のある答えを自分で導き出す能力が必要になります。
「自分で考える」ということは「自分の頭 (自分がすでに持っているもの) だけで考える」ということではありません。みなさんが抱く疑問は、すでにほかの誰かが考えている問題である場合がほとんどです。自分が関心を持っている問題をほかのひとはどのように解決しようとしているのかを知ることが問題解決への近道になることもあります。
そのときに近道になるかどうかを考えることが「自分で考える」ということです。「多くのひとが支持しているから」とか「偉い人がいっているから」という理由で、自分で考えて判断することを怠ると、自分で解決策を考える機会を逃すことになります。大学生のみなさんには、本をたくさん読んでいろいろな考え方を知り、そのうえで最後にどうするかは自分で考える(そして間違っていたら、また考える)面白さを実感できるような大学生活を送ってもらえたらと思います。
私が担当している「法理学」は、法哲学ともいいます。「法とはなにか」、「自由とはなにか」、「正義はどうあるべきか」など法や国家、正義について根本的に考える学問です。この文章の冒頭にある「法律という言葉を聞いてなにを思い浮かべますか」という問いに、法理学 (法哲学) は「そもそもなぜ?」という視点を取り入れて、たとえば「そもそも法律とはなにか (どのような性質をもつのか)」、「法はそもそもなぜ必要なのか」というように問いを立てることになります。
このような視点から法を眺めることは、法をさまざまな面から理解することにつながります。社会で生きているみなさんの身近にある法 (律)について、自分で考えてみたいひとは、ぜひ考えてみてください。いまこの瞬間からも考え始めることはできます。