刑事法

田川 靖紘准教授

たがわ やすひろ / TAGAWA Yasuhiro

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専門分野:刑法

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教員からのメッセージ
 高校生の皆さんは、「法学(法律学)」と言われても〝ピン″とこない人の方が多いかもしれません。条文の暗記が大変そうだな、というイメージがあるかもしれませんが、法学は、条文の丸暗記をする学問ではありません。私は法学の中でも刑法を研究していますが、ここでは、刑法という学問が何を考える学問なのか(大学では、考え方を学ぶとともに、どう解決するかを「自分で」考えなければいけません)、具体的な例(具体的事実の錯誤)を使ってみていきましょう。
 刑法には、故意犯(こいはん)と過失犯(かしつはん)という概念があります。とりあえず、故意は、「わざと」結果を発生させた、過失は、「うっかり」結果を発生させてしまった、くらいに考えてください。さて、「甲が、Aを殺害するつもりでけん銃を発射したが、その弾丸がAの身体を貫通してAを殺害するとともに、Aの背後にいて甲からは認識できなかったBをも殺害してしまった場合」について考えてみましょう。
 甲の行為が、Aについては「わざと」であることに問題はなさそうです。では、Bについてはどうでしょうか。
① 甲は、Bの存在を認識できていないのだから、「わざと」殺したのではなく、「うっかり」死なせてしまったと考える。
② 殺人罪の場合「およそ人を殺すな」という規範を有しているのであり、甲は「人を殺すつもりで」、「人を殺した」と考える。すなわち、A・B両名を「わざと」殺したと考える(最判昭和53・7・28刑集32巻5号1068頁)。
 さて、皆さんは①と②のどちらがより妥当だと考えるでしょうか。そして、それは「なぜ」でしょうか。この「なぜ」まで答えられることが重要です。そして、そのヒントは、刑法の授業にあるのです。愛媛大学の教室で、皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

関口 和徳准教授

せきぐち かずのり / SEKIGUCHI Kazunori

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専門分野:刑事訴訟法

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教員からのメッセージ
 刑事訴訟法は,日本の最高法規である日本国憲法,刑事訴訟法や刑事訴訟規則をはじめとする様々な法律・規則および判例の解釈などを通じて,刑事手続(刑事裁判)の実際を客観的に明らかにし,そこに存在する問題点を洗い出し,その上で,(時には,外国の法制度や判例なども参考にしつつ)刑事裁判のあるべき姿を考える学問領域です。
 刑事裁判における理想は,無実の者を処罰しないこと,すなわち,冤罪の悲劇を生まないことといえます。日本国憲法が被疑者・被告人の権利を手厚く保障していることや,「疑わしきは被告人の利益に」が刑事裁判の鉄則とされていることも,このことを裏付けています。ところが,冤罪の悲劇は一向に後を絶たないのが現状です。なぜ冤罪の悲劇が繰り返されるのか。冤罪の原因はどこにあるのか。どうすれば冤罪をなくすことができるのか。これらの点に最大の関心を払いつつ,研究を進めています。
 ところで,刑事訴訟法を学ぶことによって得られるものは,刑事裁判に関する知識だけではありません。
 まず,「刑事裁判はその国の文明のバロメーターである」といわれるように,刑事裁判はその国の本質(とりわけ,その国でどのくらい個人の人権が大切にされているか)を浮き彫りにします。刑事訴訟法を学ぶことは,日本という国の本質やそこに横たわる問題をより深く知ることにつながります。
 また,人間は予断・偏見に基づいて物事を判断してしまいがちです。犯罪事件の「犯人」逮捕のニュースを見て,「何て悪い奴だ。こんな奴は厳罰に処すべきだ。」といった感情を抱いたことはないでしょうか。誰もが抱くこうした素朴な感情にこそ,実は大きな落とし穴があります。なぜなら,逮捕されたというだけでは,その人物が本当に犯人なのかどうかはわからないからです。刑事裁判は,犯罪の疑いがかけられている人物が本当に犯人なのかどうかについて,その人物の権利を保障しつつ,証拠に基づいて丹念に確認し,真実を明らかにしていく手続です。刑事訴訟法を学ぶことは,予断や偏見を排し公正に物事を見極める眼を養うことにもつながるのです。 
 他にも,刑事訴訟法を学ぶことで得られるものは沢山あります。ぜひ一度,刑事訴訟法という窓から我々の生きる世界を眺めてみてください。そこには他の窓からは決して見ることのできない光景が広がっているはずです。