地域文化分野

野崎 賢也准教授

のざき けんや / NOZAKI Kenya

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専門分野:社会学

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教員からのメッセージ
 食と社会や環境の関係を研究しています。食べものが作り出される自然環境・生態系や地域社会と,食べものの消費は相互に影響しています。ここ数年,日本でもやっと話題になり始めましたが,クロマグロやウナギなど,絶滅が危惧されている水産物の大半を消費しているのは日本です。このままではダメなのは明らかなのに,自分でブレーキをかけて止められないまま,行きつくところ(=絶滅)まで行ってしまいそうな,食べ尽くしそうな勢いです。
 食の安全についても同様で,日本社会は一面では食の安全にとても厳しいですが(食べものの外見や異物混入など),他方では世界的に安全性が危惧されている食品添加物や化学物質(人工甘味料やトランス脂肪酸など)は規制も進まず,身近に氾濫しています。日本社会は,食べものによって深刻な健康被害を引き起こした水俣病等の公害や森永ヒ素ミルク事件などを経験したはずですが,その反省がいかされていると思えません。授業で水俣病のことを取り上げると,多くの学生はその名称を知っているだけで,水俣病が認められるまでに長い時間がかかって被害が拡大したことも知らないし,それが遠い過去の出来事だとイメージしていて,いまでも救済されていない被害者が多いことも知りません。「臭いものにフタ」という言葉があるように,都合の悪いことを直視せず,途中で止められず行きつくところまでいってしまうのは,食べもの以外にも日本社会にはたくさんの事例があると思います(「戦争」もそうでした)。テレビや新聞などのマスメディアやジャーナリズム,そしてアカデミズムのあり方も関係があるでしょう。
 食と健康の問題では,しばらく前から肥満と貧困の関係も知られるようになりました。世界の「飢餓人口」は8億人,その一方で「肥満人口」は数年前に20億人を超えたと推計されています。しかし,これは世界が豊かになったからだと単純には言えず,飢餓も肥満もどちらも「貧困」が関係しています。先進国でも途上国でも,貧困層で肥満が増加していて,これは社会の「格差」と関係があります。日本も貧困が社会問題とみなされるようになり,特に「子どもの貧困」が懸念されています。
 食に関わる様々な社会問題を,フィールドワークや実践活動も交えて学んでもらいたいと思っています。

朝井 志歩教授

あさい しほ / ASAI Shiho

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専門分野:社会学

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教員からのメッセージ
 地球環境問題をはじめとして,今日の社会では環境問題に対する関心が高まり,経済や政治,私達の生活など社会の様々な領域のあり方が環境問題と関わっていると考えられるようになりました。しかし,環境問題への関心が進んだ今日でさえも,未解決なまま放置されている環境問題も社会には存在しています。これまで私の研究では,オゾン層破壊物質であるフロンの回収が法律で義務付けられるまでの過程や,米軍基地周辺での騒音問題など,現代の日本社会で解決されてこなかった環境問題を取り上げ,市民運動やNPOの取り組みが問題解決過程にどのような影響を与えてきたのかという点に関心を持ってきました。つまり,環境問題の発生や問題解決が困難な構造的要因の解明と,市民運動による問題解決への取り組みという相互関係について,社会学の観点から研究しています。
 環境問題というと,自然科学の領域での研究だと思われる学生も多いかと思いますが,環境問題というのは自然災害とは違い,人間の諸活動が原因となって発生しています。そのため,人と社会との関わりや,社会規範の形成,集団内での意思決定,社会構造の変化や文化のあり方などといった観点で物事を捉える社会学でこそ,環境問題の把握に有効であるといわれています。
 2011年3月の東日本大震災による福島第一原発の事故以来,放射能という環境リスクの大きさを社会はどのように考えていくべきかという問題に私達は直面しています。社会の持続可能性がますます問われるようになってきた中で,原発問題をはじめとする様々な環境問題を通して,地域や社会,私たちの生活のあり方など,これらのテーマに関心を持つ学生たちと一緒に考えていきたいと思っています。

兼子 純教授

かねこ じゅん / KANEKO Jun

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専門分野:地理学

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教員からのメッセージ
 出身は愛知県豊田市で,これまで新潟県と茨城県つくば市に在住していました。それぞれ地域的な特徴や個性を持つ場所ですが,共通していたのは「自動車社会」であったということです。いわゆるモータリゼーションの進展によって,われわれ生活者は便利さを享受するとともに,活動の範囲を大幅に広げてきました。そのような生活者(消費者)に対して,チェーンストアと呼ばれる企業群は,消費者の身近な場所に店舗を展開し,大量仕入れやコストの削減によって低価格な商品を販売して,消費者の支持を集めて成長してきました。今まで大都市に行かなくては買うことができなかった衣料品や雑貨のブランドも,現在では全国各地に展開するショッピングセンターで手に入れることができます。そのような背景には,道路網整備による物流システムの発達や情報システムの高度化といった技術の進歩が欠かせません。
 以上では近年の買い物環境を巡る「善」の側面を強調してきましたが,「負」の側面はないのでしょうか。上記の店舗群は消費者の近くに店舗を立地しようとするあまり,「郊外型」「ロードサイド型」の商業集積地を新たに生み出してきました。衣料品チェーン,家電量販店,大型ショッピングセンター,食料品スーパーなどなど・・・。限られたパイ(人口数)の中で,新たな購買先が生まれれば,奪われる場所もあります。それが中心市街地の空洞化問題と呼ばれるものです。なぜ,中心市街地を活性化させなければならないのか?これは学問上での課題でもありますが,中心市街地はやはり「都市の顔」とも呼ぶことができる存在で,その都市の経済,社会,文化の基盤となるべき場所です。自分の出身地が没個性で他の都市と何ら違いがなければ,その土地に愛着を持てるでしょうか。私は愛媛という土地で,今後の都市がどのような存在であるべきなのか考えていきたいと思います。
 2008年の日経流通新聞(日経MJ)によれば,皆さんの世代の若者は「巣ごもり族」と呼ぶそうです。つまり,車離れ,酒離れが顕著で,インターネットや電子機器を活用して自宅での快適な生活を楽しみ,行動範囲を広くしない志向の世代だそうです。これは悪い側面ばかりを強調した話ではありません。若者の車離れは,環境問題への強い関心の現れであり,これからの都市社会は公共交通を活かしたコンパクトなまちづくりをしていかなくてはならないのですから。しかし,せっかく松山という土地で過ごすからには,一歩まちへ出かけて「見て」「聞いて」「話をして」見ませんか。地理学のアプローチは多様ですが,私はさまざまな土地で見て,聞いて,話をして,その地域の構造を把握することに努めています。さまざまな土地に出かけ,さまざまな人から話を聞き,たまにはお酒の力を借りながら語り合える,地理学はそんな魅力のある学問ですよ。ぜひ,一緒に地理学を学びましょう!

石黒 聡士准教授

いしぐろ さとし / ISHIGURO Satoshi

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専門分野:地理学

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教員からのメッセージ
 今日はどんな坂を登りましたか?
 私たちが普段の生活で目にしたり,体感したりする地面の起伏などの自然環境は,理由もなく,なんとなくそこにあるように見えても, そうなっている理由が必ずあります。そしてそれは,気が遠くなるような壮大な空間的・時間的スケールの中で形作られてきたものです。私たちはその一端を見ているに過ぎません。
 地形や気候は私たちの生活に密接に関係しています。平らで広く,多くの水を湛えることができる平野は,水田に適しており,秋には一 面が黄金色に染まります。一方で,日当たりがよい斜面で,水はけが良い土地は果樹園に適しており,さまざまな果物がたわわに実りま す。昔から,人はこのような土地の性質を上手に利用し,工夫することで生活してきました。
 しかし,自然は恩恵ばかりを与えてくれるものではありません。台風や大雨により,河川は氾濫して洪水を起こし,活断層が活動すれば 地震が発生し,時には甚大な人的・物的被害をもたらします。自然災害の発生の仕組みを解明し,いかに被害を軽減するかを追求するこ とも地理学の大切な役割の一つです。
 私たちを取り巻く自然環境を観察するためには,どのような方法があるでしょうか。地球規模の広域を対象にする際には,衛星画像を 用いることが有効です。都市や集落などを対象にする際は,航空写真が有効です。そして何と言っても,地理学において最も重要かつ 直接的な手段は,現地に出かけていって実物を観察する踏査です。
 さらに近年はUAV(Unmanned Aerial Vehicle, 無人航空機,いわゆるドローン)が爆発的に普及し,自然地理学的調査に革命的な変化 をもたらしています。私はUAVを地形学的調査に応用し,従来は不可能であった高精細な地形解析に取り組んでいます。
 自然地理学は,人間生活を取り巻く自然環境を注意深く観察することから始まります。なぜそこは坂道になっているのか,なぜそこに 崖があるのかなど,まずは「なぜ?」に気づくことが大切です。その問いに対して現地を観察し,考察し,答えを見いだすことは,ひいては 災害に対して強靭な社会をつくることにもつながります。
 今日あなたが登った道は,なぜ坂になっているのでしょうか?

笹田 朋孝准教授

ささだ ともたか / SASADA Tomotaka

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専門分野:考古学

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教員からのメッセージ
 考古学は、遺跡の発掘調査を行ない、検出された遺構や出土した遺物(土器や石器など)から過去の人々の文化や歴史を研究する学問です。ざっくり言えば、「モノから過去のことを考える」学問です。わたしはこれまで“鉄”が文化や社会にどのような影響を与えてきたのかについて、考古学の手法を主に用いて研究してきました。現在の主なフィールドはモンゴルです。若い頃にはシベリアの森林地帯、江戸遺跡、沖縄のグスク、北海道のチャシなどの様々な遺跡の調査に参加してきました。最近では幕末の産業革命遺跡の調査にも関わっています。
 考古学では発掘調査をはじめとして、他の文系の学問とは異なる技術や知識が必要とされます。そのため私の研究室では春に古墳の測量調査、夏季休暇中に愛媛県内の遺跡の発掘調査を行なっています。地域の人々とともに、教科書に掲載されていない地域独自の歴史や文化を”文字通り”掘り起こしています。その調査成果は発掘報告書や研究室シンポジウムなどで広く学会へ発信するとともに、現地説明会や報告会、あるいは特別展などで地域の方々へと還元しています。またモンゴルの発掘調査に学生も一緒に参加することもあります。卒業生たちは、愛媛県教育委員会をはじめとして、市町村の文化財担当の専門職員や博物館の学芸員として活躍しています。
 考古学はフィールドの学問ですので、体と頭を両方使って研究することになります。屋外の調査はそれなりに大変ですが、普段の生活では味わうことのできない貴重な体験を積むことができます。自分の脚で遺跡を巡り、自分の手で過去の歴史を掘り起こすことに興味のある学生は授業を履修するなど、ぜひ考古学の世界に足を踏み入れてみてください。


幸泉 満夫准教授

こいずみ みつお / KOIZUMI Mitsuo

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専門分野:考古学

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教員からのメッセージ
 本学の文系では,法文学部でのみ取得可能な国家資格「学芸員資格」の養成コースを担当しています。
「学芸員」とは,国の法律で定められた博物館等で働く専門職員のことです。
 ゼミでは,各種博物館の収蔵庫に未評価のまま眠る,貴重な考古系資料(=出土文化財)を「博物館学」的視座から再評価することが,専攻生の皆さんの最初の課題となります。同じ考古学分野でも,私のゼミでは「博物館学」がベースですので,遺跡の「発掘実習」は原則行っておりません(=新制「考古学Ⅱ」)。
 具体的には博物館概論,博物館資料論,博物館教育論,考古学概論Ⅱ,考古学特講Ⅱ, そして博物館実習Ⅰ・Ⅱ等の関連諸授業を通じて,学生の皆さん達とともに学び,語り合うなかで,文化財資料の取り扱い方や各種計測法,フィールド調査の方法,展示,普及教育,研究成果といった公開方法など,様々な専門技術と知識,理論の修得を目指します。そして,学部生段階での国家資格「学芸員資格」免許の取得を目標とします。
 在学中,幾多の実践経験を積み重ねることにより,きっと専門性の高い職種へと就職の門戸も開かれていくことでしよう。将来的には各種学芸員や文化財専門職員,教職員等として,各地の博物館園や教育委員会,埋蔵文化財センターなど,様々な専門研究機関や教育機関等への道が期待できます。また,例え将来は文化財関連の道に進まないとしても,きちんとした目標を定め,大学で学ぼうとする意欲さえあれば,大いに歓迎します。
 私のもう一つの専門は先史考古学です。従って,実践研究では縄文時代の「出土文化財」を基盤としています。人と社会,自然との調和を重んじた縄文時代人の精神文化構造を調べることで,現代社会の様々な矛盾についても,じっくりと考えてみませんか。博物館学をベースにした考古学Ⅱに興味関心がある学生さんは,ぜひ一度,法文学部本館4階にある研究室を訪ねてみてくださいね。