教員からのメッセージ
法学は,神学,医学と並んで,世界で最も古い学問です。そして,神学が人間の心の悩みごとを解決し,医学が人間の身体の悩みごとを解決することを目的とするように,法学は人間の社会的悩みごとを解決することを目的としているから,学問として最も古くから成立し,発展してきたのだと言われます。人間は生活の中で,心の「悩み」だけでなく,身体の「悩み」や社会的な「悩み」を抱えるときがあります。そのような社会的な「悩み」を解決するために,あるいは「悩み」を抱えないで済むように,法学を学んだ経験が活きるでしょう。ただし,そこで役立つものは,法律の条文や裁判所の判例といった知識ではなく,むしろ,法的なものの考え方です。法に関する知識だけであれば大学を卒業してもいくらでも学べます。しかし,法的なものの考え方を修得するには,法学を体系的に集中的に学べる大学時代より適当な時期は他にはないと思います。私が法学・政策学コースで担当するのは,憲法学,その中でも統治機構といわれる分野です。ここに登場するのは,国会や内閣,裁判所といったものなので,一見すると人間の日々の生活の中での「悩み」とは縁遠いように感じるかもしれません。しかし,統治機構の分野は,まさに法が人間の悩みの解決に役立つことができるような「土俵」を設定することに関わるものです。
「土俵」の上で展開される華麗な法学だけでなく,「土俵」の下でそれを支えている法学もなかなか面白い,と思ってもらえるように工夫したいと思っています。