政治学

梶原 克彦教授

かじわら かつひこ / KAJIWARA Katsuhiko

,

専門分野:歴史政治学

メッセージを見る

教員からのメッセージ
 私は19世末からのオーストリアにおけるナショナリズムの問題を研究しています。現在のオーストリア人にとって「自明である」オーストリア人という意識は,第二次世界大戦後に「形成された」ものだといわれています。私は,このオーストリア人意識がどのようにして形成されたのか,その過程を考察しています。
 舞台となる中央ヨーロッパは典型的な多民族地域で,民族同士の対立が生じ,そのため二度の大戦の舞台ともなりましたが,それだけに,現在でも傾聴に値するような諸民族共生の理論が提示された地域でもあります。さながら「実験場」のような地域の民族問題を,歴史を遡及して考え,これを現代や他の地域の問題と比較検討できるのです。このことは,日本人意識のように「当たり前」のように感じているものを相対化し,「なぜそのような意識を持っているのか」と問いなおす手掛かりにもなるでしょう。
 現在は,従来の研究をさらに進め,第二次世界大戦後の国民意識形成へ向けた動きを追求する一方で,現代に関する問題関心から「人の移動」を研究しています。具体的には,19世紀末から現在に至る移民・外国人労働者の問題,そして第一次世界大戦における捕虜政策と大戦後の帰還問題を検討しています。これらを通じて「国民国家の時代」と呼ばれる20世紀を再考できればと考えています。
 私の専門分野は,政治学の一分野である歴史政治学(政治史)です。歴史を取り扱う分野ではありますが,現代的な関心を持つ人にもおすすめです。「歴史は一度きり」だとすれば過去のことをあれこれ調べても意味はないのかもしれません。しかし人間社会の仕組みを知ろうとするとき,なかなか「実験」ができないことを思えば,過去の事象を通して現在の事柄を考察する必要性も生まれてこようかと思います。政治学のなかに歴史を取り扱う科目がある理由もここにあり,だからこそ,現代の問題に関心がある人にもぜひ学んでほしいと思っています。

福井 秀樹教授

ふくい ひでき / FUKUI Hideki

,

専門分野:政治システム論

メッセージを見る

教員からのメッセージ
公共政策論と政治システム論を担当しています。専門は政策分析で、航空に関わる政策の分析を中心に行っています。その関連で、2015年4月から2017年3月まで、国土交通省航空局に政策調査室長として出向し、実務の世界に身を置いてきました。航空局では、政・官・民の一筋縄ではいかない複雑な関係や、理論・学術的分析と現実との難しい関係を文字通り肌で学ばせて頂きました。こうした経験を今後、研究・教育に活かし、社会に還元できたらと思っています。 政治および公共政策は、価値や資源の権威的配分に関わる活動です。公共政策論と政治システム論を学ぶこと、そして政策分析を行うことは、このような活動の裏側を探検することに他なりません。一見するともっともらしく思われる様々な政治的決定や政策の「裏側」で、 どのような利害やインセンティブが働いて、どのような結果がもたらされてきたのか。あなたも一緒に「探検」してみませんか。

菅原 健志准教授

すがわら たけし / SUGAWARA Takeshi

,

専門分野:国際関係論

メッセージを見る

教員からのメッセージ
 私の専門はイギリス外交史で、特に日英同盟に対するイギリスの外交政策をイギリス帝国の防衛という観点から研究しています。日英同盟は日本とイギリスの二国間の同盟ですが、当時のイギリスが世界大に広がる帝国であったため、東アジアだけでなくヨーロッパ、アメリカ、インド、中東といった様々な国や地域の利害と密接に結びついていました。このような日英同盟のグローバルな側面を、主にイギリスの史料に基づいて解明することを研究テーマとしています。また私が授業で担当する国際関係論は、様々なアプローチから外交や国際政治について学ぶ科目であり、歴史だけでなく理論や時事問題の分析なども取り扱います。
 ところで、歴史を学ぶことについて皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。中学や高校で受けた過去の授業を振り返って、「暗記ばかりでつまらない」と思うかもしれません。将来の就活や資格試験を考えて、「歴史を勉強しても役に立たない」と思うかもしれません。
私からお伝えしたいことは、まず大学で歴史を学ぶ際には、語呂合わせなどで無理やり暗記する必要はありません。むしろ重要なことは「何が問題となったのか」、そして「なぜそのような問題が生じたのか」を考えることです。おそらくそのように考えることは、歴史に限らず他の多くの分野でも必要とされるであろうと思います。
次に歴史が役立つかという点について、確かに就活や資格試験では役に立たないかもしれません。しかしこれからの人生で問題に直面してどうすべきか迷った時、歴史を学んだことが役に立つかもしれません。皆さんが今後直面する問題はそれぞれに固有の問題で、一つとして同じではありません。しかし歴史を学ぶと、異なる時代や場所で生きた人々が似たような問題で悩んでいたことに気付くと思います。その時、先人たちが何を考え、どのように行動したかは、皆さんが直面する問題への答えにはならなくてもヒントにはなると思います。
グローバル化などによって現代は非常に変化の激しい時代となりました。その結果、過去は時代遅れとして切り捨てられ、未来は予測不可能として敬遠されて、現在に没入しがちになっています。もちろん目の前の物事に精一杯取り組むことはとても重要です。ただ歴史を題材にして、過去を振り返り、未来について考えることができれば、それだけで歴史を学ぶことには意義があるかもしれないと考えています。

三上 了教授

みかみ さとる / MIKAMI Satoru

,

専門分野:国際協力論

メッセージを見る

教員からのメッセージ
 人生は確率変数です。数ある潜在的な可能性の中で,どれが現実として出現するか,それは多かれ少なかれ偶然に支配されます。例えば,いつどこで生まれるか,学ぶか,働くか,死ぬか,すべては確率変数です。もちろん構造的制約や経路依存性により確率分布の形状は異なるでしょう。しかし,一瞬一瞬に偶発的要素が介在していることは確かだと思います。私は人生の一瞬一瞬を支配していた確率分布に思いをはせつつ,たまたま生起した現実を受け入れ,大切にすることをモットーにしています。
 さて,私は現在,主として開発援助政策の国際比較を行っています。これ自体も確率変数ですが,どのような政策がいつ行われるのか,ということも確率変数です。そしてその政策によって,誰がどのような影響を受けるのか,ということもまた確率変数です。しかし制度や政策は一斉に多くの人に影響を与えることが多く,上記のように影響の受け方は決して一様ではないとしても,ある種の傾向をもつことも事実です。私は制度や政策が説明責任を果たすためには,その平均的な効果を統計学等の科学的手法で明らかにしなければならないと思っています。
 と同時に,全体の中に含まれた一つの事例に注目することの重要性も認識しています。回帰モデルの想定によくあてはまるとしても,あてはまらないにしても,当事者にとっては実現値がすべてだからです。蓋然性は,個々の結果に責任を持ちません。私はその一つ一つの真実も知りたいと思っています。
 確率分布を俯瞰しつつ,個々の事例が,あるいは自分自身が,確率分布のどこに位置づけられるのか把握することは,ときに哀しく,もどかしく,そして興味深くもあります。学生の皆さんには,研究テーマに関わらず,しっかりとした方法論を身につけてもらいたいと考えています。