公法

井口 秀作教授

いぐち しゅうさく / IGUCHI Shusaku

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専門分野:憲法

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教員からのメッセージ
 法学は,神学,医学と並んで,世界で最も古い学問です。そして,神学が人間の心の悩みごとを解決し,医学が人間の身体の悩みごとを解決することを目的とするように,法学は人間の社会的悩みごとを解決することを目的としているから,学問として最も古くから成立し,発展してきたのだと言われます。人間は生活の中で,心の「悩み」だけでなく,身体の「悩み」や社会的な「悩み」を抱えるときがあります。そのような社会的な「悩み」を解決するために,あるいは「悩み」を抱えないで済むように,法学を学んだ経験が活きるでしょう。ただし,そこで役立つものは,法律の条文や裁判所の判例といった知識ではなく,むしろ,法的なものの考え方です。法に関する知識だけであれば大学を卒業してもいくらでも学べます。しかし,法的なものの考え方を修得するには,法学を体系的に集中的に学べる大学時代より適当な時期は他にはないと思います。
 私が法学・政策学コースで担当するのは,憲法学,その中でも統治機構といわれる分野です。ここに登場するのは,国会や内閣,裁判所といったものなので,一見すると人間の日々の生活の中での「悩み」とは縁遠いように感じるかもしれません。しかし,統治機構の分野は,まさに法が人間の悩みの解決に役立つことができるような「土俵」を設定することに関わるものです。
 「土俵」の上で展開される華麗な法学だけでなく,「土俵」の下でそれを支えている法学もなかなか面白い,と思ってもらえるように工夫したいと思っています。

光信 一宏教授

みつのぶ かずひろ / MITSUNOBU Kazuhiro

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専門分野:憲法

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教員からのメッセージ
 日本国憲法の本文は全部で103の条文で構成されていますが,その中で最も大切な条文を1つだけ挙げるとしたら,皆さんは何を挙げますか?戦力の不保持をうたう9条でしょうか?それとも国民主権原理を定める1条でしょうか?もちろん唯一の正解はありませんが,憲法学者の多くが13条だと答えるはずです。13条には,「すべて国民は,個人として尊重される。(略)」と書かれており,これを個人主義といいます。個人主義とは,「人間社会における価値の根元が個々の人間にあるとし,何よりも先に個人を尊重しようとする原理」(美濃部達吉の弟子であった宮沢俊義の言葉)のことで,人種や民族といった個人を超越する全体のために個人を犠牲にしてかえりみない全体主義(ナチス・ドイツの下で,600万人ものユダヤ人がただ単にユダヤ人であるというだけで虐殺された事実を思い起こしてください)を断固として拒否します。要するに,日本国憲法の究極の目標は一人一人の人間を自主的な人格として平等に尊重する社会,すなわち基本的人権の保障が十二分に確立された社会の実現だといってよいでしょう。しかし世の中を見渡しますと,冤罪・不当逮捕や社会的弱者に対する様々な差別をはじめ,個人の基本的人権が国家権力や他の私人によって侵害される事例は枚挙にいとまがありません。皆さんには,憲法人権論を学んで,日本国憲法が理想とする個人主義社会の実現に向け,理不尽にも差別され人間としての尊厳を踏みにじられた人々の心の痛みを共有できる感性と,冷静に筋道を立てて論理的に考えることができる理性的能力とをぜひ身につけていただきたいと思います。

権 奇法教授

こん ぎぼぶ / KWON Gibob

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専門分野:行政法

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教員からのメッセージ
 大学における外国人教員というと,主に,語学を教えたり国際交流に関わったりすることをイメージする場合が多いでしょうが,私はそうしたことに直接関わっているわけではありません。普通に行政法を教えています。学問というのは,個々の具体的な事例を研究することもあるでしょうが,それよりも全体を貫く仕組みや理論を研究するものであり,このような理論は国境という壁を越えた普遍性を有するものでもあります。だからこそ外国人である私が日本の大学で行政法を教えることができたでしょう。もちろん,外国人としての自分の経験や知識を教育・研究に生かしていくことも重要だと思っています。
 さて,私が専門としている行政法とは,沢山ある法律のうち,行政に関する法律を総じていう場合のことです。行政法は,行政を縛るものであると同時に行政に権限を与えるものです。これは行政活動が法律に基づいて行わなければならないとのことを意味します。建築行政で言えば,違法建築物が存在する場合,行政はその建物の所有者に対して違法部分の除却命令を発することができ,また命令に応じない場合には強制的な手段を用いて除去することができます。このような行政の権限は,建築基準法という法律が行政にそのような権限を与えているからこそ可能なものあり,法律の根拠なしにはできない行政活動です。これを裏返してみると,建物所有者からすれば,違法でない建物の除却命令や強制執行を受ける所以はないことを意味します。このように,行政をめぐる法律関係は,行政の責務・権限と国民の権利・義務が対称構造にあり,行政法は,このような法律関係を規律する法律ということができます。
 行政法を勉強することは,様々な行政活動の仕組みに関する理解と,行政の活動をめぐって発生する様々な紛争を解決するための手続を学習することです。ひいては,行政法に関わる社会的問題を発見・認識し,問題解決のための手続や妥当な結論を導くためのプロセスを明確に理解できる力を身につけることでもあります。

加藤 祐子准教授

かとう ゆうこ / kato yuko

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専門分野:地方自治法・行政法

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教員からのメッセージ
法学という分野は、一般的に、難しそうな印象を受けるものであるかもしれません。その中でも、私の担当する行政法や地方自治法はどのようなものなのか(特に行政法)、イメージがわきにくいものだと思います。しかし例えば地方自治法は、自治体がその地域の特性に応じた自主性・自立性を発揮する仕組みをつくるうえで大切なルールを定めており、実は、私たちの暮らしと密接なかかわりを持っているものです。
私が専門に研究している地下水行政について言えば、地下水保全において大きな役割を担ってきたのが地方自治法や憲法等で学ぶ条例です。日本では、地下水は土地所有権に付随するものとして、土地を持っている人がその土地の下にある地下水を自由に採取できるという考え方が古くから根付いてきました。しかし、高度経済成長期に地下水汚染や地盤沈下が問題となり、地下水を個人が自由に採取できるものとするのではなく国や自治体のものとし、取水等の規制を厳しく行うべきではないかという声が高まりました。その中で、国の法律レベルでは地下水を保全するための仕組みがなかなか作られず様々な利害関係者の反対等もあった中で、地下水に生活用水等を大きく依存している自治体が先陣を切って条例を制定することによって独自に地下水の保全システムを構築し(地下水保全条例などの制定)、その地域の地下水保全に取り組み続けてきました。そのため、自治体によっては、条例上、個人が自由に地下水を採取すること等に対して厳しい制限を加えているところ等があります。
このように、具体的な題材を通して見てみると、地方自治法等で学ぶことの意義や機能について、イメージがだんだんとわいてくると思います。このような学習を通じて、皆さんには、自分たちの地域生活や社会をどのように形づくっていくべきか、主体的に考えられるようになってほしいと思います。