笹沼 朋子講師

ささぬま ともこ / SASANUMA Tomoko

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専門分野:労働法
教員からのメッセージ
 最近では,ブラック企業とかブラックバイトなどという言葉も流行るようになりました。学生さんの中には,「ブラック企業に就職してしまったらどうしよう」というような不安を抱く人も増えました。労働法という法律は,そんな不安を抱く労働者の権利を保障して,なるべく快適に働くことができるように社会を変えていくために作られました。
 けれども,労働者を守るために,国家あるいは政府が,心優しくもそんな法律を用意してくれたわけではありません。また,法律があるからといって,わたしたちの職業生活が安定していて,幸せだということもありません。労働法は,労働者自身が闘い,権利を勝ち取って,その結果として生まれ,育っている制度なのです。労働者が少しでも甘い顔をして,闘うことを忘れたら,保障された権利はちりぢりと霧散してしまうでしょう。
 では,労働者は,何と闘うのでしょう。何と闘い続けて,権利保障を守るのでしょうか。政策を練り,法律を作り,それを実施する国家でしょうか?自分たちにとって都合の良い政策や法律を作るよう画策する強大な経営者団体でしょうか?あるいは,自分が就職している会社や,自分の上司でしょうか?あるいは,「上司のいうことに逆らってはいけない」という世間の常識でしょうか?
 おそらく,労働者は自分の権利を守るために,そのすべてと闘い続けています。けれども,最も厳しい闘いは,「こんなことを言ったら,会社に居づらくなってしまうのではないか」と尻込みをする自分自身の心の葛藤ではないかと思います。大学では,ぜひ,その自分自身の心の弱さについて,研究し,学んでください。そして,それを克服するためにすべきことを考えてください。労働法は,労働者のために必要な法律関係の知識であり,この知識によって,ブラック企業が,あるいは日本の企業が,いかに違法な行為を行っているかを知ることができるでしょう。けれども,その知識を活かして,自分自身の職業生活を快適なものに変えていくためには,自分自身の心の弱さや醜さと向き合い,自分自身を改革していく勇気を養っていかなければなりません。大学というところは,そういう自分が生きていくための,勇気と智恵を養う場であり,それが大学で学ぶ労働法です。