川島 佳弘講師

かわしまよしひろ / KAWASHIMA Yoshihiro

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専門分野:日本史
教員からのメッセージ
 皆さんは「戦国時代」と聞くと、どのような印象をもちますか。天下統一に向けた群雄割拠の時代、合戦が繰り広げられた争乱の時代など、個人の興味や関心、視点によって多様なイメージがあると思います。いずれにしても、社会全体の構造の変革が大きく進んだ時代であることに間違いありません。私は全国各地に活力のある時代だったと考えています。戦乱や飢饉など地域社会の存亡にかかる厳しい現実がありましたが、その一方で地域の領主や民衆たちは、あらゆる手段を使って生き残るための方策を思案しました。ある者は地域資源をもとに経済活動で富を蓄え、ある者は軍事力や調略を用いて領地を拡大させ、またある者は外交戦略を駆使して一族の存続を図ったのです。
 愛媛県の中世の城館跡の分布状況をみると、瀬戸内の島々から四国山地の山間部まで県内のほぼ全域に広がっているのがわかります。その数は、遺構が確認できるものだけで700以上、伝承地などを含めると優に1,000を超えると考えられます。大きな屋敷をもつ大規模な城から、合戦時の拠点となる砦まで、どれも地域の人びとが活動した痕跡です。ではなぜ、離島や今では人里離れた山奥にまで城館が築かれたのでしょうか。それを読み解くには、時代の特徴をとらえるのと同時に、その土地ならではの地域性を理解する必要があります。例えば、海に面した城の多くは、港や海峡を監視するために築かれました。そこから当時の海運の様子、人や物の動きがみえてきます。戦国時代の研究を通して、地域社会をみる目が養われます。この視点は、現在の地域だけでなく、未来を見据えるための手がかりとなるものです。
 私は愛媛大学に入学して、はじめて本格的な「学問」としての日本史に出会いました。大学の日本史は、高等学校までの「教科」の日本史とは異なり、受動的に知識を蓄えることよりも、埋もれた事実を掘り起こし、新たな歴史像を創り出すことに重点が置かれています。それを知った学生時代の私は、自分も通説を覆して歴史的事実の「第一発見者」になれるかもしれないと思い、胸を躍らせたことを今も覚えています。学生の皆さんにも、新たな発見をする感動を味わって欲しいと願っています。