法学

山口 和子准教授

やまぐち かずこ / YAMAGUCHI Kazuko

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専門分野:商法・海商法

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教員からのメッセージ
 愛媛大学に「商法」担当教員として赴任してから,早いもので20年以上がたってしまった。同僚の先生方もいつの間にか年下が多くなった。キャリアだけは長いのであるが,正直なところ学生の授業評価アンケートの結果には落ち込むことが多い。「授業が難しすぎて理解不能!」(←ちょっとは自宅学習してますか?),とか「小テストの内容が難しすぎる。」(←だから持ち込みを認めているでしょう)とか,授業に対する学生の不満が満載で,読むのがつらくなるほどである。「子どもは褒めて育てよ」というが,学生諸君も時々は,教員に授業のモチベーションが上がるような優しい言葉をかけても罰は当たらないと思う。
 さて,授業評価の結果が芳しくないのは私の能力不足もあるけれども,法律学という学問自体あまり面白いものではない。法律を勉強する理由は,公務員試験や各種の国家試験に必要だからとか,法曹になりたいとか,あくまで必要性が前提としてあることが多く,内容が面白くて勉強しているという人はただの変人である(!)。法律の用語は特殊で,難解なものも多く,最近の法律も現代化されてきているといえ,初学者がすぐに理解できるような内容ではない。法律学の勉強には,法律に独特の論理や解釈の方法,用語を習得するということが不可欠であるが,これは語学学習と同じで,地道にコツコツ勉強するしか方法がないのである。私がおすすめするのは,なるべく早い段階で,なにか資格試験や法学検定試験等に合格することを目標として設定することである。学習目標があることで砂をかむような法律の勉強のモチベーションを高めることができるだろう(私のゼミ(商法・海商法)では,希望者がいれば宅地建物取引士の資格試験の自主勉強会を開催します。)。
 以上で述べたことと異なるけれど,勉強を進めていくと,法律学とは本当は面白い学問であるということがわかる。法律には,現実のドロドロとした人間同士の争いを解決したり,その利害を調整する機能がある。社会の様々な場面で,法律がどのように機能しているのか(あるいは機能していないのか)を知ることは大変面白いことである。ぜひ一緒に法律を勉強しましょう。

小田 敬美教授

おだ たかよし / ODA Takayoshi

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専門分野:民事訴訟法

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教員からのメッセージ
 誰でも病気やケガをするように、社会生活では誰もが何らかのトラブルに遭います。大学在学中でも交通事故やバイトでトラブルを経験する人が少なくありません。大学卒業後は活動範囲が広がるにつれ、職場や家庭で法律上の問題を含むさまざまなトラブルに遭遇することとなります。私の研究分野は、さまざまな法的トラブルの解決方法です。
 ところで、「法学は難しい」というイメージを持つ人が多いようです。また、条文を暗記する科目だと誤解している人も少なくありません。法学の特徴は、同じく問題解決型の学問領域である医学と比較すると理解しやすいでしょう。医学は、人の身体に起こるトラブル(病気やケガ)の予防や治療を目的としています。これに対し、法学は、人と人との間(つまり社会)で起こるトラブルの予防や解決が目的です。法学の中で、その解決方法として刑罰を用いる分野は刑事法と呼ばれ、問題解決のため当事者間の権利や義務の問題として対処するのが民事法の分野です。私が担当する「民事訴訟法」という分野は、強制的手段(訴訟や強制執行)を用いて抜本的な問題解決を図るという点で、医療でいう外科分野に似ています。一般的な手術よりも身体的負担の少ない内視鏡手術や化学療法があるように、法的トラブルの解決方法としても、(裁判所での訴訟に比べ)当事者にとって負担の少ない<早い安い旨い!>方法もあります。また、急患の人のために救急救命医療があるように、法律の世界でも緊急処置として民事保全という救済手段があります。予防医学があるように予防法学だってあります。
 法学の学修は自分自身のトラブル予防や解決に役立つだけでなく、みなさんの家族や友人を助け、職場での業務をスムースに推し進めるためにも有用です。法学を通じて社会を学び、危機管理と問題解決の力を培って自分の力を社会で活かしたい、そんなあなたの学びを力強くサポートします。

桑島 翠講師

くわじま すい / KUWAJIMA Sui

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専門分野:刑法

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教員からのメッセージ
 刑法や犯罪という言葉を聞くと、学生の皆さんの中には「もし自分の行為が犯罪になったら?」と考える方もいるかもしれません。確かに少し怖い想像ですが、日常生活の中で私たちの何気ない行動が犯罪に結びつく可能性はゼロではありません。例えば、SNSに投稿したコメントが相手を傷つける内容であれば、名誉毀損罪や侮辱罪に該当するかもしれません。また、落とし物を拾って届けずに自分のものにする、店員からお釣りを多く受け取って黙っていた場合には、横領罪や詐欺罪に問われる可能性があります。私たちが普段何気なく行う行動は、実は刑法と密接に関係しているのです。特に現代のデジタル社会では、刑法と日常の関係はますます密接です。不正ログイン、違法ダウンロード、ファスト映画の視聴、オンラインゲームでのチート行為など、インターネット上での行為も犯罪に該当する可能性があります。
 こうした日常で見かける何気ない行為が犯罪に繋がる可能性がある以上、日常生活の自分の行為が、どのような法的評価を受けるのか、犯罪が成立するのであればそれは何罪でどのような刑罰を受けるのかについて知ることは、社会で生きるための重要なリテラシーと言えるでしょう。刑法学では、これらの問題を体系的に学び、深く掘り下げていきます。その魅力は、単なる理論の習得にとどまらず、法律が現実社会とどのように結びついているかを知る点にあります。私たちの身近で起きている出来事が法律上どのように評価されるのか、また正義がどのように実現されるのかを学ぶことを通じて、社会や法律への理解を深めることができます。
 刑法学は難しそうに感じられるかもしれませんが、身近な出来事を切り口に考えることで、刑法学の重要性とその魅力を実感できるはずです。私たち一人ひとりが法律を理解し、適切に活用できる力を養うことは、より良い社会を築くための第一歩です。ぜひ、刑法学の学びに触れ、その魅力を感じてみてください。

関口 和徳准教授

せきぐち かずのり / SEKIGUCHI Kazunori

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専門分野:刑事訴訟法

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教員からのメッセージ
 刑事訴訟法は,日本の最高法規である日本国憲法,刑事訴訟法や刑事訴訟規則をはじめとする様々な法律・規則および判例の解釈などを通じて,刑事手続(刑事裁判)の実際を客観的に明らかにし,そこに存在する問題点を洗い出し,その上で,(時には,外国の法制度や判例なども参考にしつつ)刑事裁判のあるべき姿を考える学問領域です。
 刑事裁判における理想は,無実の者を処罰しないこと,すなわち,冤罪の悲劇を生まないことといえます。日本国憲法が被疑者・被告人の権利を手厚く保障していることや,「疑わしきは被告人の利益に」が刑事裁判の鉄則とされていることも,このことを裏付けています。ところが,冤罪の悲劇は一向に後を絶たないのが現状です。なぜ冤罪の悲劇が繰り返されるのか。冤罪の原因はどこにあるのか。どうすれば冤罪をなくすことができるのか。これらの点に最大の関心を払いつつ,研究を進めています。
 ところで,刑事訴訟法を学ぶことによって得られるものは,刑事裁判に関する知識だけではありません。
 まず,「刑事裁判はその国の文明のバロメーターである」といわれるように,刑事裁判はその国の本質(とりわけ,その国でどのくらい個人の人権が大切にされているか)を浮き彫りにします。刑事訴訟法を学ぶことは,日本という国の本質やそこに横たわる問題をより深く知ることにつながります。
 また,人間は予断・偏見に基づいて物事を判断してしまいがちです。犯罪事件の「犯人」逮捕のニュースを見て,「何て悪い奴だ。こんな奴は厳罰に処すべきだ。」といった感情を抱いたことはないでしょうか。誰もが抱くこうした素朴な感情にこそ,実は大きな落とし穴があります。なぜなら,逮捕されたというだけでは,その人物が本当に犯人なのかどうかはわからないからです。刑事裁判は,犯罪の疑いがかけられている人物が本当に犯人なのかどうかについて,その人物の権利を保障しつつ,証拠に基づいて丹念に確認し,真実を明らかにしていく手続です。刑事訴訟法を学ぶことは,予断や偏見を排し公正に物事を見極める眼を養うことにもつながるのです。 
 他にも,刑事訴訟法を学ぶことで得られるものは沢山あります。ぜひ一度,刑事訴訟法という窓から我々の生きる世界を眺めてみてください。そこには他の窓からは決して見ることのできない光景が広がっているはずです。

笹沼 朋子講師

ささぬま ともこ / SASANUMA Tomoko

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専門分野:労働法

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教員からのメッセージ
 最近では,ブラック企業とかブラックバイトなどという言葉も流行るようになりました。学生さんの中には,「ブラック企業に就職してしまったらどうしよう」というような不安を抱く人も増えました。労働法という法律は,そんな不安を抱く労働者の権利を保障して,なるべく快適に働くことができるように社会を変えていくために作られました。
 けれども,労働者を守るために,国家あるいは政府が,心優しくもそんな法律を用意してくれたわけではありません。また,法律があるからといって,わたしたちの職業生活が安定していて,幸せだということもありません。労働法は,労働者自身が闘い,権利を勝ち取って,その結果として生まれ,育っている制度なのです。労働者が少しでも甘い顔をして,闘うことを忘れたら,保障された権利はちりぢりと霧散してしまうでしょう。
 では,労働者は,何と闘うのでしょう。何と闘い続けて,権利保障を守るのでしょうか。政策を練り,法律を作り,それを実施する国家でしょうか?自分たちにとって都合の良い政策や法律を作るよう画策する強大な経営者団体でしょうか?あるいは,自分が就職している会社や,自分の上司でしょうか?あるいは,「上司のいうことに逆らってはいけない」という世間の常識でしょうか?
 おそらく,労働者は自分の権利を守るために,そのすべてと闘い続けています。けれども,最も厳しい闘いは,「こんなことを言ったら,会社に居づらくなってしまうのではないか」と尻込みをする自分自身の心の葛藤ではないかと思います。大学では,ぜひ,その自分自身の心の弱さについて,研究し,学んでください。そして,それを克服するためにすべきことを考えてください。労働法は,労働者のために必要な法律関係の知識であり,この知識によって,ブラック企業が,あるいは日本の企業が,いかに違法な行為を行っているかを知ることができるでしょう。けれども,その知識を活かして,自分自身の職業生活を快適なものに変えていくためには,自分自身の心の弱さや醜さと向き合い,自分自身を改革していく勇気を養っていかなければなりません。大学というところは,そういう自分が生きていくための,勇気と智恵を養う場であり,それが大学で学ぶ労働法です。

鈴木 靜教授

すずき しずか / SUZUKI Shizuka

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専門分野:社会保障法

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教員からのメッセージ
 人権としての社会保障の観点から,社会保障法学を研究しています。
 現代は,「当たり前に暮らす」ことが,ますます難しくなってきています。その背景には,仕事に就き,働き続けることが難しくなっていることもありますし,一人ひとりの生活を支える所得保障や医療,福祉サービスのあり方が,多様性をもつ私達の暮らし方にあっていないこともあるかもしれません。人々の生活実態はしっかり踏まえたうえで,法制度のあり方や政策が実施される際の問題点を,「法的に」考察し,今後の展望を考えていきます。社会保障は,私自身や家族の問題です。それ以上に,私や家族を超して社会のあり方を考え,新たな社会を創り出すための学問分野だといえます。たとえば,多くの人たちが,質の高い社会保障サービスを望みますが,「質の高さ」はどのように考えたらよいでしょうか。私は,「質の高さ」を決めるのは,自治体の責任,サービス提供者の専門性とともに「民主的手続き」が大事だと考えています。私たちが,自治体やサービス提供事業所に「お任せ」で良いサービスと望むだけでは,ニーズに合ったサービスにはなりませんし,社会保障制度についても無関心なままです。
 では「民主的」とはどういうことか。それ以前に,「当たり前に暮らす」の「当たり前」とは具体的にどういうことか。時代により,地域により,一人ひとりにとって,どういう意味を持ち機能するのか。国や時代により,同じではありません。その矛盾に敏感な年代のひとつは,学生である10代,20代の皆さんであると感じています。
 頭が柔軟で,フットワーク軽い学生こそ,さまざまな問題や価値観を考えることができます。社会保障分野での課題は,新しい時代を考えることが大事ですし,そのためには歴史を学ぶこと,理論を学ぶこととともに,生活の場で実際に困難を抱えている人たちの話を聞くこと,理解することが大事です。他者の話を聞くことは,大変ながらも「面白い」ことです。こういう人になりたい,と思うような大人に出会うことも多いです。それが大学教育,社会保障法学の学びの面白さだと思います。

泉 日出男教授

いずみ ひでお / IZUMI Hideo

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専門分野:経済法

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教員からのメッセージ
 主として「独占禁止法」(科目名:競争法政策)や「知的財産法」といったビジネスに関連する分野の法律と消費者保護に関連する分野の法律(科目名:消費者法政策)を担当しています。ビジネスに関連する法分野は,学生生活を送る上であまり自分には関係がないと考える学生が多いようですが,就職後に業務を行なう上では必須の分野になります。そこで私が担当する知的財産法では国家試験である知的財産管理技能検定公式テキストを教科書として指定し,受講後に検定試験を受験するよう学生に奨励しています。
なお私ですが、社会貢献活動の一環として、適格消費者団体である特定非営利活動法人えひめ消費者ネットの副理事長を務めています。上述の研究テーマに挙げている適格消費者団体訴訟制度ですが、内閣総理大臣の認定を受けた適格消費者団体が,消費者にかわって,事業者の不当な行為をやめさせるように請求できる制度です。令和6年10月末現在,全国に26の適格消費者団体がありますが,四国で唯一の適格消費者団体がえひめ消費者ネットです。このような活動での経験を活かして、「消費者法政策」では、消費者保護の一般法と位置付けられている「消費者契約法」を中心に抗議しています。
 私が担当するゼミでは、私の社会活動との関連で消費者法を中心に学習しており、ゼミ活動の一環として消費者教材を作成しています。平成30年度は、①「大学生の消費者トラブル‐インターネット・SNSの利用における注意点」を作成し愛媛県内の大学、短期大学専門学校に配布し、令和元年度は、②「漫画でわかる消費者トラブル防止ガイド【シニア編】」を作成し愛媛県内の高齢者施設等に配布しました。また今日のSNS型投資詐欺トラブルの増加を踏まえ、令和6年度は、③「【マンガでわかる】若者のためのSNS型投資詐欺トラブル防止ガイド」、④「【マンガでわかる】シニアのためのSNS型投資詐欺トラブル防止ガイド」を作成しました。③については令和7年4月入学の新入学生に配布予定であり、④について愛媛県内の高齢者施設等に配布しました。

髙島 麻未講師

たかしま あさみ / TAKASHIMA Asami

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専門分野:法理学

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教員からのメッセージ
 法律という言葉を聞いてなにを思い浮かべますか。多くのひとが憲法や民法、刑法など、さまざまな「○○法」をイメージすると思います。そして、これらの法律を学び、法に関する知識を身につけることが法学であると考えるのではないでしょうか。
 このような理解は間違いではありません。法的知識を身につけることは言うまでもなく大事なことです。しかし、法律を学ぶひとの目標は、身につけた法的知識を使って問題解決できるようになることです。そのためには、相手を納得させる説得力のある答えを自分で導き出す能力が必要になります。
 「自分で考える」ということは「自分の頭 (自分がすでに持っているもの) だけで考える」ということではありません。みなさんが抱く疑問は、すでにほかの誰かが考えている問題である場合がほとんどです。自分が関心を持っている問題をほかのひとはどのように解決しようとしているのかを知ることが問題解決への近道になることもあります。
 そのときに近道になるかどうかを考えることが「自分で考える」ということです。「多くのひとが支持しているから」とか「偉い人がいっているから」という理由で、自分で考えて判断することを怠ると、自分で解決策を考える機会を逃すことになります。大学生のみなさんには、本をたくさん読んでいろいろな考え方を知り、そのうえで最後にどうするかは自分で考える(そして間違っていたら、また考える)面白さを実感できるような大学生活を送ってもらえたらと思います。
 私が担当している「法理学」は、法哲学ともいいます。「法とはなにか」、「自由とはなにか」、「正義はどうあるべきか」など法や国家、正義について根本的に考える学問です。この文章の冒頭にある「法律という言葉を聞いてなにを思い浮かべますか」という問いに、法理学 (法哲学) は「そもそもなぜ?」という視点を取り入れて、たとえば「そもそも法律とはなにか (どのような性質をもつのか)」、「法はそもそもなぜ必要なのか」というように問いを立てることになります。
このような視点から法を眺めることは、法をさまざまな面から理解することにつながります。社会で生きているみなさんの身近にある法 (律)について、自分で考えてみたいひとは、ぜひ考えてみてください。いまこの瞬間からも考え始めることはできます。