胡 光教授

えべす ひかる / EBESU Hikaru

,

専門分野:日本史
教員からのメッセージ
 井伊直弼はどんな人物だったのでしょうか?朝廷を無視して条約を結び反対派を弾圧した国賊?それとも国難に立ち向かい日本を開国に導いた英雄?立場の違う史料を読み解くと全く異なった結論にたどりつきます。新しい史料を発見すれば,未知の歴史に出会うこともできます。皆さんは,未来の歴史を創るだけではなく,日本史を研究することで過去の歴史を創ることもできるのです。正しい歴史的事実を明らかにし,現代の日本が進むべき道標を示すことは,日本史研究の本質だと思います。そのためには,過去の人々が記した古文書を解読し,古文書の真偽を判断し,史料内容の真実を見極め,学説と比較して自分なりの結論=歴史像を創り出していく訓練を大学では行います。このような思考は,日本史の知識を活かす職業に就かない場合でも広く必要とされる方法だと言えます。もちろん,近世・近代史の専門知識を活かす,教員や博物館の学芸員,文書館のアーキビスト,図書館の司書,自治体の文化財職員なども養成していきたいと考えています。
 井伊直弼を支えた南紀派と呼ばれる大名グループの中には,伊予松山藩主松平勝成がおり,反対の一橋派には宇和島藩主伊達宗城が組していました。近世の伊予には八つも藩があり,多様な歴史と史料を持ち,歴史研究の素材には事欠きません。藩域と藩権力の相違は,現在の言語や文化,産業などにも影響を与え,近世に本格化する四国遍路や祭礼は今もなお盛んです。現代社会の原点とも言える近世史を,史料から直接学び,史料の大切さを知り,後世に伝えていく。「古きを訪ね,新しきを知り,また古きを伝える」精神で,厳しくも楽しく,ともに歴史の扉を開いてみましょう。