太田 裕信講師

おおた ひろのぶ / OTA Hironobu

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専門分野:倫理思想史
教員からのメッセージ
 「倫理思想史」というと窮屈で退屈な印象を受けるかもしれません。高校生の頃の私はそうでした。「倫理」なんて説教臭い!、「思想」の「歴史」なんて現代的じゃなくて古臭い!という風に。けれども、倫理思想史はむしろ反対の性格をもっていると、今の私は考えています。
 そもそも「倫理」とは、単にルールという意味にとどまらず、広くは、たくさんの人といっしょに生きる人間のあり方、あるべき仕方に関する世界観・価値観を意味しています。こうした古今東西の倫理や、偉い(とされている)人の思想を扱う学問が「倫理思想史」です。仏教やキリスト教など宗教によって、また古代や現代など時代によって、さらには日本やヨーロッパなど地域によって、異なった多様な倫理思想がありますので、それらのあいだで、意見が食いちがうことがあります。そこで、そうした色んな意見を尊重しながらも、共に仲良く生きるために、食いちがいを乗り越えて、人間のあるべき仕方を探究するのが「倫理学」です。倫理学は、物事を根本的に問い直す「哲学」の一部であり、倫理思想史は倫理学の側面をもちます。
 人間のあり方を根本的に問い直すのですから、倫理学・倫理思想史は、特定の考えを強制するものではありません。それどころか、自分自身の考えにも反省の目を向ける強くて自由な心が必要です。
 また現代の私たちは、労働、医療、国際政治、環境、宗教に関する様々な問題を抱えています。科学技術は私たちに大きな恩恵を与えてくれますが、人間のあり方、あるべき仕方に関する「倫理的」な問題を扱うことができません。また、その諸問題に根本的に取り組むためには、(江戸時代の研究やドイツの憲法の研究など)特定の社会や歴史を問題とする社会学、政治学、歴史学などの学問だけでも十分ではありません。それらの学問は、もちろん、たいへん重要なのですが、現代の問題に根本的に取り組むためには、どのような世界を実現すべきか、実現されるべき「よい世界」の「よい」とはそもそもどういう意味かを、根本的に問う哲学・倫理学を要求します。そうした思考がないと、見かけでは解決しても根本的解決には至らないと考えられるからです。時に哲学・倫理学は、世間を生き抜くためのノウハウ(成功哲学の類)や人生論のように思われがちですが(そのようなものが無意味ではないとしても)、実はもっと根本的で、現代の諸問題にもつながる学問なのです。
 このように「倫理思想史」は、説教的で古臭いどころか、自由で現代的な学問です。授業では、現代の大きな諸問題を見据えながら、古今東西の倫理思想を皆さんといっしょに学んでいきたいと思います。