近藤 有希子講師
こんどう ゆきこ / KONDO Yukiko
専門分野:地域研究
教員からのメッセージ
アフリカ大陸では1990年代に深刻な紛争が多数発生しましたが、私はそのなかでも、とくにルワンダという小さな国の一農村に毎年通いながら、紛争後の社会のなかで対立関係におかれた人びとがいかにともに生きるのかということについて、一貫して考えてきました。私が専門とする人類学という分野は、「他者」や「異文化」への理解を通して、人間の多様性や普遍性を追究し、さらには私たちが普段当然だと思っている「当たり前」を相対化してゆく学問だといえます。その際、「他者」の生活の場に直接出向いて、長期間にわたって参与することで調査を進めていきます。一緒に農作業をして汗を流し、収穫を悦びながらともに食し、家族の誕生と成長を祝福し、ときに親しいものの死を悼む、という循環のなかに私自身も巻き込まれていくなかで、その地で生きていくための知恵や術を教えてもらうのです。そしてこの過程において、「他者」は見ず知らずのものではなく、次第に私の知人や友人になって、ほかでもない家族のような存在になっていきました。
フィールドでは、自分自身ではどうにもならないことにも幾度となく遭遇します。それは大げさにいえば、自分の人生が台無しにされることであり、私という存在があくまで操作不可能なだれかに拠って成り立つものだということを、痛切に認識させられる出来事です。そしてそうした強烈な体験こそが、たとえばアフリカという遠い地に限らず、すぐ傍らにいる隣人の生きざまに向かい直す契機となり、「私たち」がともに生きていく仕方を考えることにつながっていくのだと、私は信じています。
大学という場は、知識を身に着けて正答を得る、という高校までの学びのあり方とは決定的に異なるものです。そこでなにより大事なことは、問いそれ自体に至ることにあると思います。それは容易なことではありません。ぜひ各々の「フィールド」に出会って巻き込まれていくなかで、そこから発される問いに応じて、自分なりの切実な問いを見つけてください。そうした姿勢においては、ひとたびその問いに答えられたように感じても、私たちはまた新たな問いに導かれてしまいます。それは一生涯にわたって続く、ひどく困難で、しかし形容しがたい喜びを伴う営みとなるはずです。