諸田 龍美教授

もろた たつみ / MOROTA Tatsumi

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専門分野:中国文学
教員からのメッセージ
 高校で漢文が好きだった人は多いはず。中国古典文学は,その漢文の中でも,詩や小説・散文など,文学的な分野を深く探究する学問です。中国の古典や伝統文化は,みなさんが想像する以上に,日本文化に対して計り知れない影響を与えてきました。まずは言葉。日本語を支える二大柱は和語と漢語ですね。その漢語の多くは中国からの輸入語です。例えば「椅子」って漢字,なぜ「イス」と発音するのでしょう?変じゃありませんか?実はそれ,中国語音(イ~ズ)の日本語なまり,なんです。つまり我々は,無意識のうちに中国語を話しているというわけ。すなわち,中国の伝統文化が,日本人に与えている影響は「無意識に及ぶほど深い」のです。まあ,大ざっぱに漢字・漢語=(古典)中国語と言えるのですから,日本語の半分は(古典)中国語が支えているといって過言ではありません。人間は「言葉」によって「世界」や「自分」を「解釈」しています。だとすれば,「あなた」という人間を深い次元で成り立たせている〈日本語や日本文化〉,それをさらに育んだ「母胎」─この際「お父さん」のことは忘れましょう─が,中国古典文化だったとしたら,どうでしょう?─あなたが「あなた」という人間を理解するためには,中国古典文化への理解が欠かせない,ということになるのではありませんか?─恥ずかしながら私(学生時代〈自分〉捜しをしていた私)は,こうして,心理学→日本語学→日本古典文学へと遡(さかのぼ)り,とうとう中国古典文学の研究にたどり着いた,という次第です。世の中〈瑣末なトリビア〉が流行ですが,せめて学生時代には,エッセンシャルな〈本質の探求〉に挑んでみませんか?〈「世界」の解釈法〉や〈人としての個性的な生き方〉,〈言語感覚や美的感性〉を磨く「文学」という分野は,そのために最も有効な─しかも実に魅力的な─生きた総合的学問の一つだと,私は信じています。